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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
304/1634

6-138 迷走


なぜ、こうなった。


人もおにも、守の力が少しづつ、弱まっている。分かりやすく離れている。気付いていた。いつか戻ると、思い込んでいた。


里も村も、霧雲山を頼らない。当てにしない。遠野、山中、小出、奥山、裏岩。緋美あけうま、山平も。


獣谷の隠れ里は、何となく。




何か起これば、良村よいむらを頼るだろう。良村は釜戸山、釜戸社かまどのやしろから許しを得て、他の村や里を。


雲が動けば、他の忍びも動く。



獣谷にも良村にも、社が無い。・・・・・・大実社おおみのやしろ


隠のとき、妖怪の墓場は残る。人が離れて、かなり経つ。とはいえ、御隠れになったとは限らない。


隠や妖怪が人に力を貸すなど、そう無い。良村の誰かに隠が憑く? まず、無いだろう。




「それは、どうかな。」


良村に引き取られた子は、隠憑き。憑いたのは、牙の滝の主。ただの隠では無い。人の子に憑くために、代替わりしたのだ。


使わしめ、隠、妖怪も知っている。にもかかわらず、未だ気付かぬとは。全く話にならない。




エン様が愛され、残したいと願われた。


カー様が御力をふるわれるのは、そのため。この地が乱れれば、悲しまれる。




「何か、知っているのか。」



知っているか? 寝言は寝て言え!


我はカー様の目、王の臣下ぞ。なのに、何様のつもりだ。アンリエヌの国を、化け王をさげすむのか。身の程を知れ!




守れるのは、山一つ。


統べる地を守るのは神だからと、逃げ続けている。祝辺を任されていながら、何というざま。力が弱まったのだ、引け。


守る力を与えられた。にも拘わらず、使わん、動かん?


形振なりふり構わず、戦え! いただきを守っているのは、神でなく祝だろう。山から力を放てば、多くの命を救えた。なのに霧雲山しか、守らなかった。



どれだけ多くの血が流された。どれだけ多くの命が奪われた。どれだけ多くの光を失った。


守れたのだ、オマエが力を揮えば、救えたのだ!



「何を知りたい、何を願う。」





霧雲山の統べる地で暮らす、強い祝を二人ほど。いや違う。消えた力を戻すには、何をすれば良いのか。それさえ分かれば、何とか。


・・・・・・そうでは無い。


分かっている。失った思いを再び、取り戻す。それより他に、何がある。


神が引き籠もっているからと、祝が取って代わる? そんな事、決して許されない。かといって、任せられる人など。


化け王のような者がいれば、託すのに。





「祝辺の守。我を、何だと思っている。」


「化け王!」


ブランの怒りに気付かぬとは、どこまで愚かなのだ。



守る気が無いなら、継ぐ子に託せ。救えた、守れたのに見殺しにした。あながえ! つぐなえ!



獣谷のゲンも、良村のシゲも、守るために戦った。


我の話から多くを学び、活かした。助け合い、支え合い、見知った事を広めた。更に多くを救う、助けとなった。



守よ、何をした。どれだけ救った、守った。


何もしなかった。救わなかった、守らなかった。守ったのは、霧雲山だけ。霧雲山に暮らす命しか、守らなかったのだ。



「引け、守。次の守に、全てを託せ。」




継ぐ子たちは弱い。強い力を持つ子は皆、他の山に匿われている。一人で良い、どこかに。


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