6-134 禍カウントダウン
爽やかな風が吹いた。
隠の世では、稀にしか吹かない。・・・・・・と、いうコトは。
「気付いたか。」
「蛇神様。」
ヘグ、オミ。揃って平伏す。
人のイザコザを収めるのが、釜戸山。妖怪のイザコザを収めるのが、乱雲山。
この度の裁きは、人のモノ。人の子が、人を裁く山から呼び出されたのだ。止める事など、決して。
行かせずに済むなら、行かせぬ。
マルの、眠っていた力が目覚めたのだ。釜戸山に入れば、直ぐ気付く。釜戸社はマルを守るため、いろいろ考えているようだが念のため、友にも来てもらう。
狐の泉。そう言えば、分かるだろう。
人の体は水が多い。もし許し無く近づけば、水を抜く。狐と蛇が揃うのだ。言わずとも、伝わる。
「・・・・・・その、死んでしまうのでは?」
「マルに禍を齎さなければ、死なぬ。」
牙の滝の主は、蛇の隠神。狐の泉の狐様は、海を越えて来た九尾の黒狐。
祝辺の守が束になっても、敵わない。
近づく気を失くすホドで無ければ、守り切れない。それほど、マルの力は大きい。闇に飲まれず、輝き続けたのだから。
祝辺の守が知れば、マルを引き取ると言い出し兼ねない。隠の守が幾人か止めるだろうが、どうも危うい。代替わりを急がせるか。
「霧雲山の墓場から、ほんの少しですが、悪しきモノが漏れ出ています。」
「そうか。」
天霧山、月見山、星海山、天立山、心消。霧雲山など要らぬと、早早と見限り、生き残る道を選んだ。
祝辺の守ではなく、霧雲山を切る何かが起こっている。いや、起きる。
忍びの結びは固い。結んでいない地で、禍事が・・・・・・。
矢弦の祝は、人の心を操れる。水月の祝は、水の流れが読める。見空の祝は、心の闇を操れる。糸遊の祝は、遠くの地の出来事が見える。心消の祝には、先読の力。それらが合わさる事で、何が起こる?
霧雲山には、許し無く入れない。しかし、地の中にある筋を行けば、辿り着ける。
先を読み、語る。見知り、悟る。闇に紛れ、操る。それでも変わらなかった、だから捨てた。
隠や妖怪には容易いが、人には難しい事を、軽軽と遣って退けたのか。
強い祝が五人も揃えば、有り得る。
霧雲山で起きる禍が、統べる地に及び、巻き込む。禍禍しい出来事の、前触れか。
鎮野社が抑えているから、中つ国からでは無い。根の国から、というのも無い。残るは、隠の世。
霧雲山の保ち隠は確か。人柱となる前に願いが届き、授けられた時を生き、死んだ。祝辺の守と違い、幸せに死ねた人の隠。
悪しきモノを抑える力はあっても、弱い。
決して挫けない、強い意気込みが無い。心から神を信じ、崇めている。
「その悪しきモノ、禍津日か。」
「っ、まさか!」
ヘグは梟、オミは犲。他の使わしめより、得られる知らせは多い。思い当たる節がある、ありすぎる。
マルがいる限り、良山は守られる。釜戸山へ出掛けている間に、何か。しかし、どうすれば・・・・・・・。




