6-132 何処へ?
早稲の種籾から育った稲を、手分けして穫り入れる。
育つかどうか気がかりだったが、豊かに実った。他の稲は穫り入れるまで、もう少し。こちらも、豊かに実っている。
木を切り倒し、根の周りを切り、力を合わせて引き抜く。その繰り返し。頂の辺りは開けていたが、少しづつ切り開き、田や畑を作った。
思えば、恵まれていた。
飢える事なく冬を越し、戦も乗り越えた。植え付けし、穫り入れる。他のを植え付けし、穫り入れる。
子らも、良く働く。
田や畑の事をして、釣りや狩りなどを学ぶ。少しづつ、一つづつ、出来る事を増やす。それが済めば、ノビノビ駆け回る。
「キャン、キャン。」 カケッコ、ダイスキ。
馬守を離れて、かなり経ちました。すっかり良村の犬です。フフッ。
ノリさんは今、釜戸山にいます。コハルは村に残りました。はじめは寂しかったけど、慣れました。嘘です。早く帰ってきてネ。
みんなで仲良く、遊んでます。
楽しいな、嬉しいな。シゲコさんたちは狩りとかで、いないんだ。だからコハルが、みんなを守ります。エッヘン。
「・・・・・・クゥン?」 ・・・・・・アレエ?
山越烏、ですよね。良村に祝はイマセン。
ずっと前に祀られた、何とかの社に御用ですか。舟寄せの近くに、石積みの社があります。そちらへ?
うぅん、どうしよう。ノリさんは釜戸山だし、シゲさんは、どっか行ったし。マルはマルコと山歩きで、オロチ様もマルと。
仔犬に出来る事、ありますか?
「コハルちゃん、どうしたの?」
「誰か来たのかな。」
「木の上かい?」
「大きい烏だね。」
子に用は無い。祝は・・・・・・居らなんだな。オミめ、どこだ。社を空けて、どこへ行った。
「山越烏か。」
なあに?
「祝辺の守が動いただけ、何でも無い。」
そうなの?
「クゥ?」 ソウナノ?
マルが首を傾げる。マルコも同じように、キョトン。あまりに愛らしくて、頬ずり。くすぐったそうにして、マルがコロコロ笑う。
愛し子の幸せは、隠の幸せ。心がポカポカする。
祝辺の守め、我の幸せを妨げるとは。追い払うのは容易いが、そうすると良山に蛇憑きが居ると、知られてしまう。
牙滝神が代替わりした事は、隠や妖怪に知れ渡っている。
守る地を離れ留まるなど、そう無い。あるとすれば、人に憑いた時。蛇神が憑いた。それがマルだと知られれば、どう前向きに考えても、霧雲山に奪われる。
山守か祝辺か。何れにせよ、マルは扱き使われる。させるか!
関わらなければ、それで良い。人の隠ゴトキに、何が出来る。幸い、大実神が御坐す。力が弱まったとはいえ、山神。
神の力は、神の力で隠せば良いのだ。
「どうした、ソラ。」
「コタさん、見て。大きな烏がいる。」
この山では無さそうだ。蛇神、何処へ?




