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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
298/1632

6-132 何処へ?


早稲わさ種籾たねもみから育った稲を、手分けして穫り入れる。


育つかどうか気がかりだったが、豊かに実った。他の稲は穫り入れるまで、もう少し。こちらも、豊かに実っている。



木を切り倒し、根の周りを切り、力を合わせて引き抜く。その繰り返し。いただきの辺りは開けていたが、少しづつ切り開き、田や畑を作った。




思えば、恵まれていた。


飢える事なく冬を越し、いくさも乗り越えた。植え付けし、穫り入れる。他のを植え付けし、穫り入れる。


子らも、良く働く。


田や畑の事をして、釣りや狩りなどを学ぶ。少しづつ、一つづつ、出来る事を増やす。それが済めば、ノビノビ駆け回る。






「キャン、キャン。」 カケッコ、ダイスキ。


馬守を離れて、かなり経ちました。すっかり良村よいむらの犬です。フフッ。


ノリさんは今、釜戸山にいます。コハルは村に残りました。はじめは寂しかったけど、慣れました。嘘です。早く帰ってきてネ。



みんなで仲良く、遊んでます。


楽しいな、嬉しいな。シゲコさんたちは狩りとかで、いないんだ。だからコハルが、みんなを守ります。エッヘン。





「・・・・・・クゥン?」 ・・・・・・アレエ?


山越烏、ですよね。良村に祝はイマセン。


ずっと前に祀られた、何とかの社に御用ですか。舟寄せの近くに、石積みの社があります。そちらへ?



うぅん、どうしよう。ノリさんは釜戸山だし、シゲさんは、どっか行ったし。マルはマルコと山歩きで、オロチ様もマルと。


仔犬に出来る事、ありますか?






「コハルちゃん、どうしたの?」


「誰か来たのかな。」


「木の上かい?」


「大きい烏だね。」



子に用は無い。祝は・・・・・・居らなんだな。オミめ、どこだ。社を空けて、どこへ行った。






「山越烏か。」


なあに?


「祝辺の守が動いただけ、何でも無い。」


そうなの?


「クゥ?」 ソウナノ?



マルが首をかしげる。マルコも同じように、キョトン。あまりに愛らしくて、頬ずり。くすぐったそうにして、マルがコロコロ笑う。


めぐし子の幸せは、おにの幸せ。心がポカポカする。



祝辺の守め、我の幸せを妨げるとは。追い払うのは容易たやすいが、そうすると良山よいやまに蛇憑きが居ると、知られてしまう。





牙滝神きばたきのかみが代替わりした事は、隠や妖怪に知れ渡っている。


守る地を離れ留まるなど、そう無い。あるとすれば、人に憑いた時。蛇神が憑いた。それがマルだと知られれば、どう前向きに考えても、霧雲山に奪われる。


山守か祝辺か。いづれにせよ、マルは扱き使われる。させるか!




関わらなければ、それで良い。人の隠ゴトキに、何が出来る。幸い、大実神おおみのかみ御坐おわす。力が弱まったとはいえ、山神。


神の力は、神の力で隠せば良いのだ。




「どうした、ソラ。」


「コタさん、見て。大きな烏がいる。」



この山では無さそうだ。蛇神、何処いづこへ?


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