6-128 春になったら
「キャン。」 オカエリナサイ。
「シゲさぁん。おかぁえ、りっ、な、さい。」
「ただいま、マル。」
迎えに来てくれたのか。ありがとう。
「さぁ、帰ろう。」
みんなで仲良く、夕餉を食べる。
子らが美味しそうに、幸せそうに食べている。たんと食べて、大きくなって。ずっと、ずっと幸せに暮らすんだ。
そのためなら、何だって出来るさ。守ってみせる。
オレは弱い。村を守るので、一杯一杯。でも、一人じゃ無い。九人で力を合わせれば、何とかなるさ。
だからイチ、生まれておいで。
片付けが終わり、子らはスヤスヤ、夢の中。釜戸山にいるノリを除いた、八人で話し合う。樫との事を。
「今、二夜。夜が明ければ、来る。」
来るとすれば、昼過ぎだろう。まず謡。会うと伝えれば、夜か明くる日。オロチ様が、立ち合われる。
樫は小さいが、豊かな里。良い織物を作るそうだ。大平、陽守と付き合いがある。良村に禍を齎すとは、考えにくい。
「良いと思うよ。」
アッサリと、シン。
大平の長から聞いた。謡い人の隠れ里だと。祝には目眩ましの力があって、霧雲山から里を隠している。
田も畑もあって、狩り人がいる。川は無いが、泉が多い。要る物は商いで。大平と陽守としか、付き合ってない。オレが知っているのは、これくらい。
「困っているようには、思えないな。」
ハッキリと、タケ。
田も畑もある。隠れ里なら、山の幸だって。狩り人がいるなら、肉も。織物があるなら、衣に困らない。困った時には、大平や陽守に頼れる。
・・・・・・ウン。サッパリ分かんない。なぜ良村と、結びたがるんだろう。隠れる力が有るなら、攻められない。霧雲山にも、見つからない。
「確かに。他に、何が考えられる?」
ボソッと、セン。
塩じゃないか?
大平も陽守も、山の奥にある。大平がある大山には、大山川がある。鮎川に流れてる。釣り人はいるようだが、南では見ない。
陽守は、大山より山奥だろう。渓川から入って・・・・・・どうだったかな。
ノリが言ってたから、川から行けるんだろう。けど、南では見ない。
「会って話して、嫌なら断れば良いわ。」
「そうそう。助け会えるなら、そうしよう。」
コノとコタが言う。
塩っ気が無ければ、力が出ない。海から遠く離れているから、困っているハズ。良い織物って事は、絹かしら。肌ざわりが良いのでしょうね。
海と川では、舟の扱い方が違うって、ノリが言っていた。海まで行って戻るんだ。センが疲れないように、皆で考えよう。商うなら、そのうえで。
「そろそろ、舟に乗せるか。」
釣り人を志す子たちは、森川や雪雲川で釣っている。舟には乗せない。浅瀬なら泳げるが、浮き具を増やそう。細かい事は、ノリが戻ってから。
春になったら・・・・・・。




