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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
旅立ち編
29/1622

2-19 いい湯だな!

釣り長について、すこし歩く。そこには家とは違う、竹と藁で作られた壁があった。


グルリと何かを囲っている。中に入ると台があり、竹で編んだ、平たい籠が置いてある。見ると、布が入っていた。


「脱いだ衣は、ここに入れる。朝、洗うんだ。」


そうか。よく考えてある。ポポイッと脱いで、大きな籠に入れた。さらに奥へ進むと、出で湯があった。


周りの土の上には、平べったい石が敷き詰めてある。ここで体を洗うのか。フムフム、なるほど。


浅くて広い土器で湯を掬い、体にかける。それから布で拭い、再びザバァー。洗ってから入る、そういう決まりだ。


爺様と入った出で湯は、こんなじゃなかった。猿も入っていた。広くて、とっても気持ちがよかった。でも、こういう出で湯も良い。ツウ、喜んでるかな?


「フゥ。」


肩の力が抜け、思わず言ってしまった。


「気に入ってもらえて、よかった。」


みんなニコニコしている。




ツウは驚いた。わぁ、ヘぇが連なって、アミの真似をしながら出で湯に入った。


「フゥ。」


肩の力が抜けた。


「あの向こうが男、こっちが女。」


へぇ。あ、また。


「みんな驚く。ツウだけじゃないわ。」


そう、よかった。




ポカポカあったまり、平たい籠に入っていた布で拭いてから、衣を着る。


導いて連れられた家で一休み。しばらくすると、夕餉が運ばれてきた。ツウがいない。まだ出で湯に入っているのかな?



「お待たせしました。」


ツウは村を出る時、バサッと髪を切った。兄の衣を着て、娘だと知られないように。幼子だと思われるように。


アミは気づいた。切ろうとして切ったのではない。切らなければいけなかったんだと。だから、切り揃えた。




ぐっすり眠って、目が覚めた。


「おはようございます。ゴロさん、タロさん。」


「おはよう、コウ。」


「おはよう。よく眠れたかい。」


「はい。」


「そうだ、出で湯へ行こう。」


「え? 朝からですか。」


「ああ。釜戸山に来たら、出で湯だ。」




釜戸山って、良いところだなぁ。夕餉もおいしかった。そうだ、思い出した。爺様、言ってたな。獣と入る出で湯もいいが、釜戸山の出で湯もいいぞって。




朝餉を食べて、衣を洗った。干してから、ゴロさんが言った。


「乾いたら、川田の村に帰るよ。」


「そう、ですか。」


「また会えるさ。会いに来るよ。」


そう言って、タロさんが頭を撫でてくれた。


「コウ、学ぶんだ。いろいろなことを。」


「はい。」


「ツウ。」


「はい。」


「一人じゃない。」


「はいっ。」


ツウは嬉しくて、大きな声で言った。


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