6-123 自責の念に駆られ
五つの忍びに、霧雲山の忍びを加える。
そうすれば、南の地で何が起こっているのか、知る事が出来る。霧雲山を守るためなら・・・・・・。違う、そうじゃ無い。
霧雲山の統べる地を守るのは、山守神。祝辺の守が守るのは、霧雲山。強いる事など、決して。
「お気付きのようですね。」
「・・・・・・雲よ。」
天霧山で、何を話し合った。
耶万が引いたのは、なぜだ。木菟を苦しめたのは、どこで作られた、どのような毒なのだ。
なぜ、化け王が動く。海の向こうから、取り寄せられた物なのか。耶万、風見の狙いは、何だ。
「なぜ、なぜ、何だ。ですか。」
何を話し合ったのか? さぁ、何でしょう。
耶万が引いたのは、大王が倒れたから。木菟を苦しめた毒は、耶万と風見で作られた、恐ろしい毒です。化け王の事は、ブラン様に。
耶万や風見の狙いは、霧雲山の統べる地です。攻め滅ぼし、口にするのも憚られる事を、イロイロと。
まぁ、あんなコトやこんなコトを為出かす。そう、お考えください。
「殺めたのか。」
「お忘れですか?」
忍びとは、守る者。
悪しき者から奪う事あれど、良き者からは奪わぬ。強きを挫き、弱きを助ける。それが、忍び。
霧雲山では、違うのでしょうか?
同じ事を二度、申し上げました。お忘れ無く。平に平に、お願い申し上げます。
集められた五つの忍び、全てが平伏した。こうなれば、手出し出来ない。
平の忍び? 平で、これか。頭なら、どうなる。
雲の言う通り。統べる地の外へ、霧雲山の者を出せない。使いとして出せるのは、火炎社と渦風社のみ。そう、そうなのだ。
外の話は、釜戸山と乱雲山に問い合わせ、やっと知り得る。
このままでは、いけない。分かっていても、どうにも。だからと頼らせてくれる程、忍びは甘くない。
先見や先読の力を持つ、隠の守が言った。この地で、大きな戦が起こると。南から攻められ、滅ぼされると。
矢弦、水月、見空、糸遊の祝は違う。心消の祝に、先読の力が! 隠れ里には入れられない。だから天霧山に、忍びを集めた。そう考えれば、繋がる。
で、どうする。問い詰めても、霧雲山のために動くなど。寧ろ避け、隠れるだろう。これまでと同じ、か。
・・・・・・当てに出来ないから、揃えた、か。
そうなのだろう。当てに出来ないから、隠れている。里の在り処を問うても、答えぬ。突き止めようにも、当て無し。先読の力は欲しいが、引こう。
さて、集めた忍び。このまま帰るか、捕らえるか。フッ、捕らえる? 忍びをか。
「聞きたい事、知りたい事、全て得た。」
「ハッ。これにて。」
スッと、立ち去った。
木菟と鷲の目は、残っている。言いたい事があれば、言えば良い。なぜ黙る、なぜ動かぬ。そうか、言えぬのか。動けぬのか。
我らには、知らない事が多すぎる。知ろうにも、手立てが無い。
海の向こうに、国がある。大きな、大きな国がある。幾つも幾つも、大きな国が。遠い国の話だと、ボンヤリ考えていた。
しかし、雲らは違った。出来る限り、ひたすら務め、守ろうと。・・・・・・責められぬ。




