6-117 エライもん見たな
「なんと、なんという・・・・・・。」
雲の忍頭が頭を抱え、絞り出すように言った。
「その祝の力。疑うわけでは無いが、確かなのか。」
取り乱す事なくサラッと、シゲが問う。
「はい。先読の力は、確かです。隠れ里を隠せているのも、祝の力が大きく。その、外れた事が無いのです。」
「そうか、話は分かった。で、なぜ良村と結びたいんだ。」
だから何だ。とでも言うように、シンが問う。
良村には、いやマルには、オロチ様が憑いている。マルの幸せを守るためなら、何だって為さる。
心強いな。
長の話し合いで、争わずに助け合うと決まった。にも拘わらず、まだキナ臭い。もし今、南から攻めてきたら。そりゃ、沢出の祝が見た通り。
「なぁ、教えてくれよ。黙ってナイでさ。」
シンが畳み掛ける。
「そうだな。なぜ、良村と結びたいんだ。」
シゲも問う。
「ウム。我も知りたい。なぜ良村と、結びたがる。」
人の姿に化けた大蛇が、スンとして問う。
あちゃぁ。こりゃマズイぞ。心消とも雲とも、結ばない気だ。
良村に儲けも、得も無いからな。当たり前さ、当たり前なんだけどさ。
ハァァァ。
沢出の祝も、エライもん見たな。矢弦の祝も似たようなモン、見たんだろう。
先見の、ずっと先の事は、少しづつ変わる。先読の力で繰り返し、選んだ先の事は、そう変わらないと聞いた。
・・・・・・オレ。
いや誰だって、和やかに穏やかに暮らしたい。なのに、なぜ攻める?
南の地って、豊かじゃないか! 北を目指さず、東へ西へ。どっか他所の地、狙ってくれよ。
・・・・・・あれ。頭たち、固まったまま動かない。
終わったぁ。どうすんの、オレ知らないよ。祝へは、頭から伝えてくださいネ。
良村の食べ物、美味しいそうで。なぜ知ってるか? シゲから聞きました。実は、楽しみなんです。
夕餉、頂いても宜しいでしょうか。ワクワクって、ハァァ。
「頭。そろそろ何か、言ってください。」
「そ、うだな。シゲさん。雲と影の、頭が誓う。良村には決して、仕掛けない。裏切らない。」
助け合いは、求めない。ただ互いに仕掛けず、裏切らないと誓う。忍びの結びだ。前にも言ったが破れば、他の忍びが動く。
桧、月、梟。三つの忍の頭にも、会ってもらう。
忍びの結びを、見届けるため。強いるものでは無い。どうだろう。
結んだからと、許しなく良山に入らない。必ず、許しを得てから入る。我らだけでは無い。結んだ五つの忍び、全て。
「悪い話では無い、と思うのだが・・・・・・。」
シゲとシンが見合い、頷く。それから、蛇神様を見つめた。話し合っているようだ。何も、聞こえない。
スゴイな。頭の中へ直に、か。
ちょいと、お二人さん。ソワソワしなさんな。それでも頭かい? 気持ちは、分かるケドね。
あの、ブラン様。隠れる気、無いんですか? 丸見えですよ。
姿を見せて、いらっしゃる?
化け王の仰せに従い、祝辺の守が王になれば、守られるのかなぁ。
守れる力があるのに、使えないってのも、辛いと思いますよ。オレあの守、好きじゃ無いケドね。




