2-18 釣り人の村へ
源の泉から釣り人の村まで。いつか乗ってみたいな、と思っていた馬に乗っている。
パカラッ、パカラッと、上へ下へ。手綱を持つゴロの、大きな腕の中で、コウは目を輝かせていた。
「そこの泉で休もう。」
「はい。釣り長。」
パッと明るくなり、光を纏っているような、美しい泉が見えた。
「さあ、コウ。おいで。」
馬からおろしてもらった。
「わぁ。」
馬の背から見た泉も、美しかった。けれど、近づくほど尊く、厳かに感じられた。
「ツウ、光の泉だ。」
「そうね。水が輝いて見えるわ。」
手を繋ぎ、ジッと見つめるコウとツウ。やさしく見守るシオとゴロ、タロ。
タップリ水を飲み、馬がブルルッとした。トロンとした目で、子らを見ている。
「そろそろ行こうか。」
泉から離れてすぐ、パッと森の外へ出た。
「石の川だよ。」
なるほど。水ではなく、石が流れているように見える。高くなっている方を見ると、山の上から下へ、真っすぐ伸びていた。
「釜戸山が火を噴いて、溶けた岩が流れた跡だよ。よく、よく考えても、なぜだかわからない。けれど、いつも同じところを流れるんだ。」
釣り長の話を聞き、そうなんだぁ、という顔をするコウを見て、ツウは嬉しくなった。私と同じだわ、と。
「だから、こんなに広いのに、草があまり生えていないんですね。」
「良く気づいたね。その通り。」
石の川は長く、広い。とても歩きにくそうなのに、馬は涼しい顔をしている。ザクッ、ザクッと快いまでに軽やかに。
そして再び、森の中へ。休み、休み。ゆっくりと。パアッと夕日の色に染まって、スッと暗くなる。心を動かされ、ポォとしてしまった。
釣り人の村に着く。夜が更けていた。いつもなら眠くてたまらない。なのに、ちっとも眠くなかった。
「さあ、着いたよ。」
馬からおろしてもらう。
「ありがとう、ゴロさん。」
家の中から、女の人が出て来た。
「おかえり、シオ。」
釣り長めがけて、まっしぐら。ギュッと抱きつき、幸せそう。それから、思い出したように言った。
「いらっしゃい、みなさん。」
「逆だ。」
女の人が首を傾げた。
「アミだ。」
とても仲が良いようで。
「みなさん、お疲れでしょう。どうぞ、こちらへ。」
優しい声で言った。
「ツウ、あなたはこっち。」
えっ、どうして?
「コウ。ツウは娘。だから、違うの。」
そうか、そうだね。
「わかれば良ろしい。」
ん?
「アミさん、心の声が聞こえるんですか。」
会ったばかりだ。好きだから、なんてことではない。
「聞こえない。けれど、わかる。」
ん、んっ?
「アミは馬と話せるんだ。だからかな。美しい心を持つ人なら、何を考えているのか、わかるらしい。」
へぇ。そうなんだ。
「出で湯に入って、スッキリする。それから夕餉。」




