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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
旅立ち編
28/1621

2-18 釣り人の村へ

源の泉から釣り人の村まで。いつか乗ってみたいな、と思っていた馬に乗っている。


パカラッ、パカラッと、上へ下へ。手綱を持つゴロの、大きな腕の中で、コウは目を輝かせていた。


「そこの泉で休もう。」


「はい。釣り長。」



パッと明るくなり、光を纏っているような、美しい泉が見えた。


「さあ、コウ。おいで。」


馬からおろしてもらった。


「わぁ。」


馬の背から見た泉も、美しかった。けれど、近づくほど尊く、厳かに感じられた。


「ツウ、光の泉だ。」


「そうね。水が輝いて見えるわ。」


手を繋ぎ、ジッと見つめるコウとツウ。やさしく見守るシオとゴロ、タロ。


タップリ水を飲み、馬がブルルッとした。トロンとした目で、子らを見ている。


「そろそろ行こうか。」



泉から離れてすぐ、パッと森の外へ出た。


「石の川だよ。」


なるほど。水ではなく、石が流れているように見える。高くなっている方を見ると、山の上から下へ、真っすぐ伸びていた。


「釜戸山が火を噴いて、溶けた岩が流れた跡だよ。よく、よく考えても、なぜだかわからない。けれど、いつも同じところを流れるんだ。」


釣り長の話を聞き、そうなんだぁ、という顔をするコウを見て、ツウは嬉しくなった。私と同じだわ、と。


「だから、こんなに広いのに、草があまり生えていないんですね。」


「良く気づいたね。その通り。」



石の川は長く、広い。とても歩きにくそうなのに、馬は涼しい顔をしている。ザクッ、ザクッと快いまでに軽やかに。


そして再び、森の中へ。休み、休み。ゆっくりと。パアッと夕日の色に染まって、スッと暗くなる。心を動かされ、ポォとしてしまった。




釣り人の村に着く。夜が更けていた。いつもなら眠くてたまらない。なのに、ちっとも眠くなかった。


「さあ、着いたよ。」


馬からおろしてもらう。


「ありがとう、ゴロさん。」


家の中から、女の人が出て来た。


「おかえり、シオ。」


釣り長めがけて、まっしぐら。ギュッと抱きつき、幸せそう。それから、思い出したように言った。


「いらっしゃい、みなさん。」


「逆だ。」


女の人が首を傾げた。


「アミだ。」


とても仲が良いようで。




「みなさん、お疲れでしょう。どうぞ、こちらへ。」


優しい声で言った。


「ツウ、あなたはこっち。」


えっ、どうして?


「コウ。ツウは娘。だから、違うの。」


そうか、そうだね。


「わかれば良ろしい。」


ん?


「アミさん、心の声が聞こえるんですか。」


会ったばかりだ。好きだから、なんてことではない。


「聞こえない。けれど、わかる。」


ん、んっ?


「アミは馬と話せるんだ。だからかな。美しい心を持つ人なら、何を考えているのか、わかるらしい。」


へぇ。そうなんだ。


「出で湯に入って、スッキリする。それから夕餉。」


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