6-112 任せるのと、丸投げは違う
桧、月、梟、雲、影。五つの忍び。耶万の大王、次の大王、巫に覡、風見の長。一人づつ、殺めました。
一度戻り、天霧山で話し合いました。南より攻め入る大国など、引かせるために、何が出来るかを。
「その事、知られたか。」
「はい。」
天霧山、矢弦社にて。平良に乗った隠の守が、言伝を。
「『集まった忍び。霧雲山、祝辺へ。残らず呼べ。』良いな。」
そう言い残し、消えました。
集まったのは皆、忍頭。
あの守の事です。集めたにも拘わらず、霧雲山のためにと、考えるでしょう。そして、当たり前のように使う。
忍びの結びは、それぞれの忍びが、里や村を守るための結び。霧雲山を守る物では。にも拘わらず、使い捨てるでしょう。
木菟も鷲の目も、強い。しかし耶万に。霧雲山の統べる地は、木菟と鷲の目。他の地へは、忍びの結びを使う。あの守なら、そう考えます。
「で、知られたのか。」
「いいえ。しかし、気付いているのでしょう。」
雲に会ったのではなく、天霧山に集まった。そこから、三人と考えます。日吉山、釜戸山、乱雲山には居ない。山平にも緋美にも。となれば、隠れ里。
知られているのは、六つ。遠野、山中、小出。奥山、裏岩、獣谷。何れにも居ない。
山裾の地の外。山に在るなら、陽守と大平。どちらにも居ない。であれば糸遊、見空、水月。つまり天立山、星海山、月見山となります。
どの山も高く、広い。幾らでも直ぐ、隠れられます。
「蛇神様。心消は霧雲山に付く気など、全く御座いません。叶うなら良村との、強い繋がりを。」
「シゲ、シン。二人は、どう思う。」
祝辺の守が守りたいのは、霧雲山。統べる地を守る気が有るなら、隠か妖怪を付けたハズ。
戦が終わって、開かれた長の話し合い。霧雲山から来たのは、山守の長一人。
長の集まりだから来なかったのではなく、関わる気が全く、無かったのだと思います。
あの時。ブラン様が化け王の目として、見届けられた。アンリエヌの王が、遠く離れた地の話し合いを、です!
守は祝、王とは違う。違うが、なぜ見届けない。集めたクセに、なぜ来ない。
それぞれの長が話し合って、決めろ? 信じて任せるのと、丸投げするのは違う。
「オレも、良いかな。」
シンが控え目に言う。皆、頷いた。
オレは商いで、あちこち行きます。行った先で、必ず言われます。『良村から誰か、来てくれないかな』って。
言い方は軽いんですが、目で訴えるんです。頼むって。
話を聞くと、『霧雲山が後見なのに、木菟も鷲の目も来ない』って。
深い山の奥や、入り組んだ谷の奥です。そうそう来られないでしょうが、忍びなら行けるでしょう?
地が震えた後に起こった、あの戦でも。・・・・・・誰も、一人も寄こさなかった。
それで、思ったそうです。『何のための後見だ。何を守ってるんだ。守る気あんのか』って。だから『霧雲山も祝辺の守も、当てにしない』と。
溜息を吐きながら、そう言うんです。
山の奥にある里や村には、祝が居ます。隠や妖怪から、いろいろ聞けるそうで。霧雲山を攻めた時、守の力で倒したと。
「オレ、思うんです。そんな事が出来るなら、戦を止められたんじゃないかって。」




