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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
277/1634

6-111 影ではなく、里長として


難しく考えなくて良い。ただ会って、話し合う。それだけ。


心消こけしが望むのは、良村よいむらとの絆。決して仕掛けず、裏切らない。求められれば助ける。それだけの事さ。



矢弦社やつるのやしろの祝。取り込む気でいるが、叶わないだろう。



良村と獣谷の隠れ里。何かあれば助け合うと、誓いを立てている。早稲わさに苦しめられた者の絆は、強く固い。決して裏切らない。


雲だって、良村の力を知っている。



いくら矢弦社の忍びでも、天霧山で暮らす者を守るためなら引く。良村を敵に回すなんて、愚かにも程がある。




すべては霧雲山、祝辺の守から守るため。見つかれば終わり。使われて滅ぶ。後見うしろみの無い里や村など、ぐに吹っ飛ぶ。



霧雲山を後見に持つ、獣谷の隠れ里。釜戸山を後見に持つ、良村。この二つの結び付き。強まる事は有っても、断たれる事は無い。


だから欲しかった。だから求めた。心消を残すために、どうしても・・・・・・。






「どうした?」


「何でも無い。」



この先に、良山よいやまがある。


あのいくさで、多くの命を奪った大穴。根の国へ落ちるソレが、ガバッと。許し無く入れば、真っ逆さま。恐ろしく危ない、戻れない道。


許しを得たと、使いから戻った雲が言った。偽りで無ければ、辿り着くハズ。昼なのに薄暗い。夏なのに、ヒンヤリしている。




「影にも、見えるのかい?」


「何か居るのか。」



いや居る。・・・・・・にも? おにか妖怪か、見えない何かがかたわらに。


息は出来る、苦しく無い。手も足もかじかむが、動くのは確かだ。





「ワン。」 ツイテコイ。


「長の犬だ。慌てず騒がず、行こう。」



良山の麓の家で、昼。


こちらは三人。雲の忍頭、雲、影。あちらは二人。良村の長と、商い人。蛇神様も、御出で遊ばす。


落ち着け。


巻き込もうとは思わない。心消の後見に、などとだいそれた考えも無い。ただ、絆が欲しいだけ。叶うなら、助け合いたい。





「良村の長、シゲだ。」


「商い人、シン。」


「我は隠。この度の話し合い、立ち合うぞ。」


フン。心消のヤツ、やっと解り居ったか。マルの幸せを妨げるモノは、全て排する。




「天霧山。矢弦社の忍び、雲。立ち合いのため、参りました。」


「雲の忍頭。名は、申せません。」


「良い。」


「心消の里長。影の忍頭ゆえ、名は。」


「良い。」



申し上げます。


心消は良村に、決して仕掛けません。決して、裏切りません。


心消が求めるのは、良村との結び。もし叶うなら、互いに仕掛けず、助け合うと。




多くは望みません。


心消と結ばずとも、良村は困らない。しかし、それでも欲してしまう。




後見の無い、隠れ里です。


祝辺の守に見つかれば、もてあそばれる。そんな事、許せない。受け入れられない。


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