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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
274/1633

6-108 守りたい全てを、守り抜け


オロチ様の御話を伺い、イチの死を受け入れた。



・・・・・・攻めず仕掛けず、助けを求められれば、出来る限り分けたのに。


玉置、北山、東山。豊田、川北、飯田に武田。なぜ、国の中で何とかしようとしなかった。あの三鶴でも、出来た事だ!


守るために戦った。奪うための罠を仕掛け、待ち伏せた。悔いてなど、いない。


多くの命を奪ったが、攻められなければ何もなかった。仕掛けられなければ、仕掛けない。



戦場いくさばへ送られる人たちは、望んだワケじゃ無い。


強いられて、断れなくて、どうにもならずに加わる。死ぬかもしれないと分かっていても、愚かな行いだと分かっていても、生きて戻れないと分かっていても。



早稲わさに居たんだ。戦い慣れている。それでも、イヤなんだ。戦なんて嫌いだ! それでも奪うしかなくて、逃げられなくて戦った。


奪う時は、躊躇ためらわない。


スッと、命を奪う。死ぬなら早い方が良い。痛いのも辛いのも苦しいのも、ぐに終わらせる。


奪いたくなんか無い。戦いたくなんか無い。それでも奪うしか無い。他に、何が出来る?


地が大きく二度ふたたび、震えた。火を扱っている時に、震えた。それで燃えたらしいが、全ての倉が燃えるなんて、有り得ない。


愚かな長たちが戦を始め、死ななくて良い人たちが死んだ。


困ったなら、頼れば良い。無いなら、譲ってもらえば良い。人には言の葉がある。話し合えば良い。


・・・・・・奪う事しか考えられない長どもが、戦を始めた。それも冬に! 良村よいむらを狙った戦は、雪解けの頃。あの戦で、イチは死んだ。




「シゲよ。しき妖怪と、話がついた。」



悪しき妖怪か。


あの戦にも、悪しき妖怪が絡んでいたな。祝辺の守が祓われたと。・・・・・・守は、御存ごぞんじだったのか?


もし、そうなら。そうであったなら、止められた。もし、そうだったなら。


あの戦で、多くの子が死んだ。あの戦で、多くの親が死んだ。あの戦で、親を失った子。あの戦で、子を失った親。あの戦で、あの戦のために、どれだけ死んだんだ!



「シゲ。」


ハッ。オレは何を。


「難しいだろうが、思い悩むな。」



守るために戦った。それだけの事。


良村は、お前たちは何も悪くない。攻められれば、守る。仕掛けられれば、戦う。奪いたくて、奪ったのでは無い。違うか?


人の欲は底なし。求めて欲して、奪い合う。だからこそ誤らぬよう、違えぬよう、努める事が出来るのだ。


皆が皆、歪まぬ。真っ直ぐ、心を込めて向き合える。それが人。裏と表、光と影。どちらも人だ。



この地にある村や里は、どこも和やかに暮らしている。助け合い、話し合い、譲り合い、ゆったりとな。


何があろうと、我はマルを守る。マルが求めるなら、力を尽くそう。


だから決して、マルを悲しませるな。マルを引き取ったのはシゲ、お前だ。マルの親代わりとして、しっかり生きろ。


もしだの、何だのカンだの、後ろばかり見るな。振り返るより、前を見据えろ。長だろう。迷うな。守りたい全てを、守り抜け。



「オロチ様。末永く、宜しくお願いします。」



そうだ、守るんだ。子らに、オレたちと同じ思いなど、させられない。幸せにするんだ!

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