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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
263/1634

6-97 違得るなよ


心消こけしを守れるなら、何でも受け入れる。忍びの誓いだって、破らない。


もし破れば、心消の者は皆殺し。里が滅ぶだけじゃ済まない。裏切らない、裏切れない。それが、忍びの結び。


良村よいむらに信じてもらうには、雲の助けが要る。


矢弦社やつるのやしろだって、良村を取り込もうと考えている筈。だから、オレを会わせたんだ。忍頭と力頭に! でなけりゃ、何なんだ?



「良村の長は、言いました。『忍びの結びに良村も加われば、仕掛けず助け合う』と。」


「で。」


「忍びのいない村は、忍びの結びに加われません。」


「解っていて、伝えなかった。」


「・・・・・・はい。『飲めぬなら、去れ』と言われ、こちらへ。」


「影だけでは結べぬと言うた。それは、良い。」



で、どうする。


良村が求めるのは、心消との繋がりでは無い。忍びの結びに加わる事だ。それは叶わぬ。受け入れられぬ。どうする気だ、心消の長よ。


そもそも、心消に何が出来る。良村が心消と結んで、何の得がある。



ここは霧雲山、山守神やまもりのかみが統べる地。


東は神成山かみなりやま渦風神うずかぜのかみが統べる地。西はおそれ山、火炎神ほむらのかみが統べる地。神は御守りくださる。動くのは祝、おにや妖怪。



祝辺の守は、霧雲山を守る。


東は鮎川。陽守山やもりやまと大山に。西は多滝川おおたきのかわ鑪山たたらやまと天霧山に。南の鳥の川は、蔦山。暴れ川は、獣谷の隠れ里。崖の川から下は、良村に守らせる。



北は山が険しく、多くの川が流れている。


どれも狭く浅く、曲がりねじけて、攻めようが無い。星海山、天立山、月見山に任せ、足りなければ山平の地に。


南の畏れ川からも、攻めようと思えば攻められるが、険しい山道を登らねば。


守るとすれば、鑪山と蔦山。鳥の川が手薄になれば、山裾の地にある村や、国が動く。



「落ち着いて考えろ。良村に、心消は要るか?」



何が出来る?


良村には、狩り人に釣り人。きこりに商い人も。何より、強い。守りながら戦える。戦い慣れている。


良村の後見うしろみは、釜戸社かまどのやしろ。頼るなら、獣谷の隠れ里。近くには、茅野に馬守。少し離れて、草谷。



「・・・・・・良村に心消は・・・・・・要らない。」



心消の長よ。良村と結ぶなら、違得たがえるな。決して仕掛けず、近づくな。求められたら、助けろ。頼るな。求めるな。誓え!


察しの通り、『良村を取り込め』と、言い付けられた。


雲は天霧山、矢弦社の忍び。祝に従い、動く。断られれば、ぐ引くさ。敵に回したくない。



「心消は良村に、決して仕掛けません。求められれば、助けます。裏切らないと、誓います。」


「その結び、雲が見届ける。」



良村に引き取られた幼子には、隠が憑いている。


蛇の隠は多いが、幼子は北山の生まれ。牙の滝の下で、倒れていた。飛び降りたのに、助かった。


これら全て繋げて、考えてみろ。牙の滝の主、蛇神様だよ。



良山には、妖怪の墓場がある。


妖怪の墓場は繋がっていて、行こうと思えば行けるらしい。この山の保ち隠から、聞き出したのさ。違い無い。



「蛇神様は、牙滝様で在らせられたか。」



叶うなら初めから、やり直したい・・・・・。

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