6-93 信じても良いと思う
心消との付き合いは、雲の話を聞いてから、話し合って決める事に。
「上木の話をしよう。」
シゲが、明るい声で言った。
流山の東に、人が暮らしている。そう思わせるために、仕掛けた。渦の滝の東と、重ね崖の上に鳴子を。けどな、あったんだ。重ね崖の近くに、隠れ里が。
上木は緋の、忍びの隠れ里だ。
他とは違う姿から、夜にしか動けないらしい。コタが重ね崖の近くで、言伝を頼まれた。
オロチ様の御話では、緋は影と違い、弁えているそうだ。争いを嫌うが、姿が違い過ぎて、他との付き合いが出来ない。
忍びだ。人の命を奪う事は、ある。奪うのは、悪い人の命だけ。
夜しか動かないなら、田や畑は難しいだろう。
どうやって暮らしているのか、分からない。ただ、どうしても手に入らない物は、獣の肉や革を置いて、盗むらしい。
悪い事だと、解っている。
だから他との繋がりを、強く欲したんだろう。姿を見せたうえで、話し合いたいから、村へ入る許しが欲しいと言ってきた。
オレは、信じて良いと思う。オロチ様もな、『話し合い、付き合っても良いと思ったなら、結んでやれ』と。
「オレも良いと思う。」
コタが続ける。
会って話して、思ったんだ。木菟や鷲の目とは、心構えが違うなって。何となく、オレたちに似てる。そう思ったんだ。
姿を隠すのも、やむを得ないよ。違うから。
オレさ、驚いて動けなかったんだ。初めてだよ、あの感じ。逃げ出したいとかじゃなく、懐かしいってさ。
忍びの子じゃナイぜ。爺さんも婆さんも、父さんも母さんも、ずっと村にいたから違う。けどさ。感じが似てるんだ、オレたちに。
「オレも、良いと思う。」
シンが続ける。
あちこち行くけど、いきなり訪ねたりしない。まず、繋ぎを頼む。会って話したいってね。
上木の人。オロチ様に御頼みしようと思えば、出来たと思う。それでも、人に頼んだ。いつ会えるかも分からないのに、起きて。
夜しか動けないって事は、昼は寝てる。オレらとは逆だ。
眠いと思うぜ。眩しくて、辛いだろうな。それでも、良村との繋がりを求めて、切っ掛けを掴もうとして。そういう人なら、信じても良いと思う。
会って話して、難しいと思ったら、そう伝えれば良い。隠さずに、思ったままをさ。
「そうだな。」
「そうね。」
コノとタケが続ける。
「会いたいとか、話したいとか、そう思うのは、好きだから。嫌いなら会いたくないし、話したくない。好きか嫌いかだけで、決めるのは良く無いわ。けどね、聞く限り、悪い人とは思えない。」
「そうそう。オロチ様じゃなく、コタに言伝を頼んだんだ。隠じゃなく、人にさ。それに忍びなら、忍べるってコトだよね? この山に入るのは、難しい。会いたいけど、会えない。さて、どうしたもんかって悩んだから、入れなかったんだと思う。」
「そうだな、会うよ。ただ、村には入れない。麓の家で会って話そうと思う。どうかな。」




