6-89 神様、隠様、オロチ様
緋と別れ、コハルを連れて村に戻ったコタ。シゲに話したい事があると言って、家の中へ。
「あのな。上木の緋から、言伝を頼まれた。」
「上木? 忍びの、隠れ里かな。」
「知ってるのかい?」
「いいや。緋と聞いて、忍びの名かなと。」
そうか。里の長として、会って話したいと。
オロチ様の仰せから、許しを得なければ入れないと。心消の影とは違い、心得ている。しかし忍び。会うのは良いが、村に入れるのはなぁ。
「村に入れるのは、止めた方が良いと思う。」
「禍を齎すと?」
「それは分からない。」
オレのカンだ。
緋ってのは、オレたちに似ている。上手く言えないけど、カンだぞ、カン。人を殺してるよ。それも、数えきれないほど。強いられたのではなく、守るために。
食べ物を得るため、着る者を得るため、暮らしに要る物を得るため。生きてゆくため、暮らしてゆくためにさ。
あの見た目じゃ、逃げられる。
オレたちは、早稲でさ。だから、見た目で決めない。けど、知らない人からすれば、怖いだろう。
怖がるような、避けるようなのと、付き合えない。信じられない。それで、山奥に逃げた。ひっそり暮らしているんだ、きっと。
「隠れ里や村との繋がりを持てれば、奪わずとも生きられる。」
「でも、叶わない。」
「良村ならと思っていた時、コタが来た。」
「話しかけられ、こうなった。」
畑の手伝いをしていたマルを呼び、お願いする。
「なぁ、マル。オロチ様に、伺いたい事が有るんだ。どうすれば良いかな?」
大蛇、お話があるって。
「マルコ。マルから離れるでないぞ。」
「ハイ。」
尾をフリフリしながら、吠えずに伝える。
「シゲ、コタ。ここでは、障りが有ろう。」
「はい。では、家の中で。」
緋は、影とは大違い。賢く、弁えて居る。
会うてみよ。察しの通りだ。悪しき者の命しか、奪わぬ。其方らのように。
ずっと昔は違ったのだろうが、あの目。夜、暗い中で見る事が出来る。
明るい昼は、物が見えにくい。ボンヤリとは、見えるようだ。だから夜、動く。
上木の者は、争いを嫌う。
ただ、あの目だ。どうしても手に入らぬ物は、盗む。獣の肉や革を置いてな。悪い事だと解っているが、どうにも。だから、良村との繋がりを欲したのだろう。
話し合い、付き合っても良いと思ったなら、結んでやれ。互いに仕掛けぬ、助け合うとな。
「仰せの通り。」
揃って、平伏した。
シゲやコタだけじゃ無い。良村の大人たち皆、大蛇をオロチ様と呼び、崇めている。
牙の滝から飛び降りたマルを、傷一つ付けず、助けてくださったのだ。
人の子を助ける隠が、禍を齎すとは思えない。
助けるのはマルだけかもしれないが、こうして助けてくださる。神様、隠様、オロチ様。で、ある。




