6-88 緋との出会い
南から、大国が攻めて来る。
流山の東に村があると思わせ、騙さなければ。渦の滝の東と、重ね崖の上。仕掛けるのは、罠と鳴子。
「何をしている?」
聞いた事ない声だな。狩り人か?
「気の所為か。」
コタが呟くと、コハルが吠えた。
「キャン、キャキャン。」 ウエミテ、キノウエニヒトガイル。
かくれんぼ? ポンッてしなきゃ、捕まった事にナラナイよ。ズルいよ、下りてきて!
「どうした。木の上かい?」
高い所から悪いね。
何のために、何をしているのか。教えてくれないか? 悪い人だとは思わない。障りが無いと判るまで、姿を見せられない。
良村の人だろう?
犬の動きだけ見れば、馬守。首に布を巻いているから、良村。譲り受けた仔犬を、慈しんで飼っている。だから、悪い人では無いと思ったのさ。
「良山に耶万が、許しなく入った。」
良村を滅ぼし、山裾の地を攻める足掛かりにと、考えたらしい。
来たのは六人。罠に掛かって死んだのが、五人。一人は崖に落ちて、動けなくなっていた。ソイツは天霧山の人が、乱雲山に連れて行った。
身なりや持ち物から、戦の調べだろうと。きっと他にも、来る。この辺りに村があると思わせ、探させよう。そう考えた。
戦いに備えるだけでは、足りない。
真っ直ぐ来させず、遠回りさせる。時を費やせば、それだけ疲れるから。勝つための、仕込みさ。
「なるほどね。」
「近くに隠れ里、あるのかい?」
「・・・・・・あるよ。」
スッと音もなく、木から下りた。
頭と顔、手足にも布を巻いている。
衣は、良村の人が着ている物と同じ。目を見て驚く。撒かれた布の下に、目隠しがされていた。
ジッと見て、ハッとした。
いつも間にか、木陰に連れ込まれている。コハルが囲い駆け、して無い。この足で歩いて、ここに来たのか。
「明るいのは、辛いかい?」
「気付かれたか。」
この近くに、忍びの隠れ里がある。
良村の人と、話し合いたいと思ってね。なかなか切っ掛けが掴めず、困っていたのさ。
夜遅くフラッと、蔓川まで行った。
山に入らず、近くまでね。その時、オロチ様が仰った。『忍びが守るは、里。他は滅んでも、気に病まぬ』と。
その通り。違い無い。それでも、良村との繋がりを欲した。だから思い切って、話し掛けたのさ。
「私は上木の緋。忍びだ。長の許しを得て、昼に出て来た。」
「オレは良村のコタ。犬はコハル。里を出るのは、夜だけかい?」
「・・・・・・驚かないでほしい。」
頭に巻かれた布を解く。すると、真っ赤な髪がハラリ。目隠しの下には、梟のように大きな目。辛いのだろう。直ぐ、目隠しをした。
「言伝を頼む。」
「良いよ。」
「『緋の隠れ里、上木の長。良村の長と会って、話したい。』村へ入る許し、頂けないだろうか。」




