6-87 心消の長の証
沢出神と岩さま。祝と、社憑きの靄さま。
神の使わしめより、社の使わしめ。ノラリクラリ熊より、お狐さま。加えて、蛇神様の御力添えがあれば。
蛇神様は仰った。憑いた子のためなら、力を御貸しくださると。
子か。その子がいる限り、良村は守られる。その長が求めるのは、忍びの結びに加わる事。心消と結ぶ事では無い。
忍びの結びに、忍びではない者。里に一人でも、忍びがいれば。いない、となると難しい。この機を逃せば、次は無い。
ここで今、結ぶと言うのは容易いが、結べるとは限らない。
「影だけでは、結べません。」
結んでいる忍頭を集め、許しと認めを求める。
全てから得なければ、決して叶わない。影は、数いる忍びの一つ。解ってほしい。
心消の定めにより、名は明かせない。
明かせぬ者が何を言っても、信じられないだろう。しかし、信じて貰わねば。だから心消の、長の証を預ける。
この命。尽きたとしても、全て引き継がれる。そういう品だ。
いつまでも待たせるつもりはない。次の、満ちる月の夜。明けて直ぐの昼までに、ハッキリさせる。
「お頼みします。」
「良かろう。シゲも良いな。」
「はい。オロチ様の仰せに、従います。」
影は心消へは戻らず、天霧山へ向かった。森の中を突っ切って。
影が置いて行った、心消の長の証。
徒の勾玉に見えるが、良く見ると、金のような物が混じっている。日の光を当てると、透けて見えた。
「オロチ様、この品は。」
「水玉の石だ。勾玉は昔、犬の歯を用いた。このような石を用いるとは。心消は豊かな村から、逃げたのだろう。」
「キュゥゥ。」 ミタコトナイナ。
それ、どうするの? とっても、思いが込められてる。そんな気がする。
「気になるかい、シゲコ。」
「ワン。」 ニキナル。
シゲに撫でられ、尾をフリフリ。
心消の長の証は、失くさないように隠された。布で包まれ、傷つかないように。
「マル。マルよ、聞こえるか。」
キョロキョロ。
「こ、これ。」
「キュゥ、キャン。」 ナンダロ、ムシジャナイヨネ。
「マルコが転がしてたのは、神ぞ。」
「クゥ?」 ソウナノ?
釜戸神は、人と同じくらい大きくて・・・・・・。
「人の思いが強ければ、大きゅうなるのじゃ! マルよ。祝として、仕えよ。」
「断る。」
「隠は、黙って居れ。」
「マル、どうした?」
キョトン。
「さぁ、戻ろう。」
「はいっ、たぁけっ、さん。」
手を繋ぎ、仲良く村へ戻った。マルは日に日に、上手く話せるようになっている。
因みに、大実神と大蛇は、日が落ちるまで話し合った。




