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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
247/1634

6-81 聞いてないよ


木菟ずくが見合い、頷いた。


南の地で、何が起こったのか。行って確かめるには、守の許しが要る。良村よいむらで休んでいる木菟と、看ている鷲の目。気になるが、今は。


霧雲山の忍びは、人を殺さない。苦しめたり、傷つける事はあっても、命は奪わない。


早稲わさの社の司が、嘘を言っているとは思えない。あの男、弱いが狂っていない。早稲には珍しく、真っぐで優しい。


嘘では無い。だとすれば、他の山の忍び。


他の地にも居るのだから、我らの他にも。その忍びが、奪った。霧雲山の統べる地を、戦から守るために。



もし、蔦山が滅ぼされ、山裾の地が攻められれば。


北へ北へ進み、霧雲山の北。山平やまだいらの地。確か、星海山ほしうみやま、月見山、天立山と、繋がっていた。もしかすると、天霧山や陽守山やもりやまとも。


獣谷の他にも、隠れ里はあるだろう。


霧雲山の許しが無くても、里や村を作れる。そのドコカに忍びがいても、おかしくない。その忍びが、他の忍びと組んで、動いた。守に知られず、忍べるのだろうか。


南の地で起こった事に、霧雲山が関わっているとは、考えにくい。化け王。いくら何でも、無いか。




「霧雲山に戻ろう。」


「用は済んでいる。」


頷き、走る。向かうは祝辺、守の元へ。




木菟が良山で倒れた。


知らせを受け、平良ひらの烏を放つ。耶万やまが持ち込んだ毒によって、動けなくなったらしい。


良村の毒消しが効いたのか、少しづつ良くなっている。


そのような危ないモノ、霧雲山の統べる地に持ち込むな!


聞けば、その薬。ブラン様に渡ったとか。化け王なら、調べ尽くすだろう。待つより他、ない。




「守。急ぎ、お伝えしたく。」


「申せ。」


「霧雲山を除く、統べる地の忍び。天霧山に、集まりました。」


「天霧山か。・・・・・・その話とは。」


「南より、攻め入る大国おおくになど。引かせるために、何が出来るか。」




大王おおきみが治めるという大国。それも、いくつも。


勝つためなら選ばない、愚かな王たち。この地を狙うか。奪わせぬ、滅ぼさぬ。何としても、守らねば。


話し合いで済むなら、乱雲山に任せる。それでも歯向かうのであれば、おにや妖怪を動かす。


神は御守りくださる。守りたくば、迷うな。祝が動かねば、誰が動く。


この地に王は居らぬ、だから攻めるとでも? 認めぬ、許さぬ。よって、消す。




忍び。集まったのなら、少なくとも三人。


天霧山の雲、他には? 日吉山に釜戸山、乱雲山も違う。いるとすれば山平の地、しくは緋美あけうまの地。いづれにも・・・・・・。


隠れ里。


遠野、山中、小出。奥山、裏岩、獣谷。どの里も違う。他には? 谷河の狩り人にも、木菟や鷲の目にも見つからず、どこに。


山裾の地から離れている村。


陽守やもり、大平には。であれば糸遊いとゆふ、見空、水月か。いくら探りを入れても、全く分からない。天立山、星海山、月見山。どの山も高く、広い。隠れようと思えば、隠れられる。




しかし、なぜ。


忍びの集まりなら、木菟や鷲の目も呼ばれるだろう。呼ばれなかった、いや呼べなかった。


谷河の狩り人も、木菟も鷲の目も、祝辺の守の使い。あやめるなど、有り得ない。




隠しているとすれば、他の地で何か。知られたくない、知られてはならない事を。まさか!


「集まった忍び。霧雲山、祝辺へ。残らず、呼べ。」


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