6-81 聞いてないよ
木菟が見合い、頷いた。
南の地で、何が起こったのか。行って確かめるには、守の許しが要る。良村で休んでいる木菟と、看ている鷲の目。気になるが、今は。
霧雲山の忍びは、人を殺さない。苦しめたり、傷つける事はあっても、命は奪わない。
早稲の社の司が、嘘を言っているとは思えない。あの男、弱いが狂っていない。早稲には珍しく、真っ直ぐで優しい。
嘘では無い。だとすれば、他の山の忍び。
他の地にも居るのだから、我らの他にも。その忍びが、奪った。霧雲山の統べる地を、戦から守るために。
もし、蔦山が滅ぼされ、山裾の地が攻められれば。
北へ北へ進み、霧雲山の北。山平の地。確か、星海山、月見山、天立山と、繋がっていた。もしかすると、天霧山や陽守山とも。
獣谷の他にも、隠れ里はあるだろう。
霧雲山の許しが無くても、里や村を作れる。そのドコカに忍びがいても、おかしくない。その忍びが、他の忍びと組んで、動いた。守に知られず、忍べるのだろうか。
南の地で起こった事に、霧雲山が関わっているとは、考えにくい。化け王。いくら何でも、無いか。
「霧雲山に戻ろう。」
「用は済んでいる。」
頷き、走る。向かうは祝辺、守の元へ。
木菟が良山で倒れた。
知らせを受け、平良の烏を放つ。耶万が持ち込んだ毒によって、動けなくなったらしい。
良村の毒消しが効いたのか、少しづつ良くなっている。
そのような危ないモノ、霧雲山の統べる地に持ち込むな!
聞けば、その薬。ブラン様に渡ったとか。化け王なら、調べ尽くすだろう。待つより他、ない。
「守。急ぎ、お伝えしたく。」
「申せ。」
「霧雲山を除く、統べる地の忍び。天霧山に、集まりました。」
「天霧山か。・・・・・・その話とは。」
「南より、攻め入る大国など。引かせるために、何が出来るか。」
大王が治めるという大国。それも、幾つも。
勝つためなら選ばない、愚かな王たち。この地を狙うか。奪わせぬ、滅ぼさぬ。何としても、守らねば。
話し合いで済むなら、乱雲山に任せる。それでも歯向かうのであれば、隠や妖怪を動かす。
神は御守りくださる。守りたくば、迷うな。祝が動かねば、誰が動く。
この地に王は居らぬ、だから攻めるとでも? 認めぬ、許さぬ。よって、消す。
忍び。集まったのなら、少なくとも三人。
天霧山の雲、他には? 日吉山に釜戸山、乱雲山も違う。いるとすれば山平の地、若しくは緋美の地。何れにも・・・・・・。
隠れ里。
遠野、山中、小出。奥山、裏岩、獣谷。どの里も違う。他には? 谷河の狩り人にも、木菟や鷲の目にも見つからず、どこに。
山裾の地から離れている村。
陽守、大平には。であれば糸遊、見空、水月か。いくら探りを入れても、全く分からない。天立山、星海山、月見山。どの山も高く、広い。隠れようと思えば、隠れられる。
しかし、なぜ。
忍びの集まりなら、木菟や鷲の目も呼ばれるだろう。呼ばれなかった、いや呼べなかった。
谷河の狩り人も、木菟も鷲の目も、祝辺の守の使い。殺めるなど、有り得ない。
隠しているとすれば、他の地で何か。知られたくない、知られてはならない事を。まさか!
「集まった忍び。霧雲山、祝辺へ。残らず、呼べ。」




