表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
245/1633

6-79 終戦


耶万やまおさが殺され、風見かぜみの長になるはずだった兄は、血を吐いて死んでいた。


・・・・・・殺されたんだ。祝辺はふりべの守が放った、忍びか何かに。


父と兄を支えていた、せがれの一人は悟る。


山裾の地に手を出せば、死ぬ。祝なんて、めかんなぎおかんなぎと同じ? 違う。違うのだ!


闇にまぎれて命を奪う、闇を纏って命を奪う。


遠く離れた地であっても、多くの者に守らせていても、人の目があっても、明るくても、奪える。



霧雲山、祝辺。


怖く、恐ろしい祝。とんでもなく強い力を持つ、祝。見えない何かを、したがえる祝。死んでも、守り続ける祝。そんな祝たちを纏めるのが、祝辺の守。


ただの噂だと思っていた。とんでもない! たのだ、居るのだ。祝辺の守は、確かに居る。睨みをかして居る。




早稲わさが言っていた。釜戸山にある、釜戸社かまどのやしろ。その祝が、多くの村や国を裁くと。霧雲山から、任されていると。


それが何だ、大した事では無い。あの時は、そう思った。大王おおきみでも無い、ただの祝に、何が出来るのかと。


甘かった。


狩り人、狩頭、忍び。誰も戻らなかったから、分からなかった。いいや、違う。気付かなかった、気付けなかった。


村や国を裁けるのは、祝辺の守が認めた、祝だから。そんな祝が、一人しか居ないなんて、有り得ない。他にも居るハズ。居るのだ、いくらでも。


大王が居なくても、大国おおくにで無くても、揺るがない。霧雲山という名の大国に、愚かにも挑んでしまった。そして、やぶれた。




あれだけ送り込んだのに、あれだけ揃えたのに、勝てなかった。


耶万と手を組み、さらに送った。送って、送って、送って。誰も戻らないから、忍びを放った。


なぜ、止めなかった。


忍びを三度みたびも送り、戻らなかった時、引けば良かった。暴れ川から攻めるのはめて、鳥の川から攻めようなど、なぜ考えた。


足がかりにしようと、蔦山を攻めた。


早稲と組んで、耶万の夢に手を加えて持たせ、攻めさせたのに、負けた。長引かせれば、勝てるはずなのに。数では、勝っていたのに。試させたのに。



引こう。今、ぐ引こう。殺されたくない、死にたくない。引かなければ、消される。求めては、いけない。欲しては、いけない。して攻めるなど。






早稲も引く。


ヒトは勝てないと気付いていたから、耶万へ行く風見の長を見送って直ぐ、動いた。・・・・・・霧雲山の力に、恐れをなして。



カツはシブトイから、戻るだろう。ヌエは生きて戻るかどうか、分からない。父さんも、ジンにいも死んだ。


シンは当てに出来ないし、頼れない。


兄のクセに、オレたちを捨てた。他所よそのと、出て行った。母さんが同じってだけで、父さんは違うから。


残ったのは、ヌエだけ。


しくじった、気付かれた、見つかった。それで、捕まった。攫うなら、小さくて弱い村を狙えよ。


釜戸山の灰が降るなら、村も国も変わらない。・・・・・・まぁ、オレも知らなかったケドさ。


早稲を滅ぼしちゃ、いけない。残して、次に繋がなきゃ。


オレもヒトも死んだら、誰が早稲を守る。オレは死ねない。死んでたまるか!




耶万だって、風見だって、引くしか無い。


こっそり裏切れば、気付かれない。裏切られる方が悪い。だから裏切る。生き残るため。




耶万も風見も早稲も、蔦山から手を引いた。長く続いた戦が、やっと終わる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ