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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
244/1634

6-78 終わらせるため


ツネは案じていた。蔦山にいる、皆の事を。


『落ち着いたら迎えに行く』って、父からの事付ことづけ。信じて待っているけれど、遅すぎる。


良村よいむらの人は皆、とても良くしてくれる。蔦山の子らも、いろいろ学べて楽しそう。でも、なぜかしら。とても心細い。


父無し子になど、決して。


テルね、育つって。大きく育つって。・・・・・・父さん、いつまで待てば良いの。このまま会えないなんて、無いわよね。信じてる、信じたいの。だから、お願い。




蔦山の戦いは、続いていた。


シシ、サン、トモ。討たれた倅のかたきを討つ気で、挑む。


風見かぜみおさは、気付かない。


いつまでも続かない事に。勝てない事に。この戦は、長引かせた方が負ける。


蔦山の後ろには、多くの人がいる。戦い疲れて折れるなど、有り得ない。


矢も毒も、山の外から届けられる。釜戸山、日吉山、岩割山。鑪山たたらやま、天霧山、乱雲山。狩り人、釣り人、商い人。きこり、忍び、祝。


釜戸山の灰の降る地では、村も里も国も、何かあれば助け合う。そう決められている。


霧雲山。祝辺の守が腹をくくれば、妖怪が動く。平良ひらの烏に乗って、おにの守が社まで。人など、勝てない。




南の地。


早稲わさも風見も耶万やまも、奪い合い、潰し合うだけ。助け合おうなど、思わない。考えもしない。人が足りなければ、攫えば良いと思っている。


早稲で試した薬を使わせ、死ぬまで戦わせる。それを悪いと思わないし、弱いのが強いのに使われるのは、当たり前だと思い込んでいる。



「まだ、戻らんのか。」


「はい。もう戻らないモノとして、新たに。」


「送れ。」




耶万の大王おおきみは、苛立っていた。


めかんなぎおかんなぎも、弱い。戦えない。奪える、攫える、連れ出せる。それなのに、なぜ一人も。


逃げたのか、殺されたのか。送った十人、一人も戻らない。有り得ない!


逃げたのだ。


殺されたくなくて、質を見捨ててでも、生きたくて。ならば、送るまで。男は北、女は産ませる。


何が何でも、勝ってやる。奪って奪って、奪い尽くす。


北の地を手にすれば、人も食べ物も全て、ワシの物。王とは、従える者。平伏せ、地を這え、全てを捧げろ。


弱いから死ぬ、弱いから負ける。死にたくなければ、強くなれ。負けたくなければ、戦え。





「ヒドイね、生かしておけない。とりあえず、消すか。」


ひの、サラッと。


「ついでに巫と、覡も。」


梟も、サラリ。


「耶万の夢は、手に入れた。消すなら、急げ。」


月が囁き、ニコリ。


「風見の薬も、手に入れた。夜まで待て、大王と風見の長が、宴に出る。」


影がスッと現われ、ニタッ。


「誰が、誰をやる?」


雲まで。



桧は、耶万の大王。月は、次の大王。梟は、巫。雲は、覡。影は、風見の長。みんな仲良く? 一人づつ。



忍びって、オソロシイ。


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