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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
243/1632

6-77 逃げれば良し、進めば


流山ながれやま良山よいやまの南にある、大きな山。


大雨が降ると山が崩れ、ドドッと流れる。流れ流れるたびいただきが低くなるのだ。周りの山にき止められて、平らに。



霧雲山の統べる地は、水に恵まれている。森も豊かで、嵐が来ても崩れない。とはいえ、大雨が続くと崖が増え、川の流れが変わってしまう。


幸いな事に、良山は強い。崖はあるが、シッカリしている。獣谷も強いが、良山に比べると、泉や沢が少ない。




「『雨が降ったら逃げろ』の?」


商い人のシンでも、流山の事は知っている。


「鳥を狩るには、良い山だ。」


良く晴れて、乾いた日。渡り鳥を狙って、入った。クロは良い狩り犬だ。氷は避けるし、土の上で滑ったり、ころげたりしない。なのに、ズルッと。


足を取られ、犬の力では動けない。


ぐに駆け寄り、引っこ抜いた。そのまま抱えて山を下り、沢で洗う。ムロはクロをなだめながら、もう流山には入らないと決めた。



「まさかとは思うが、住み着いたのか。」


流山の話は、語り継がれている。たとえ知らなくても、あの地に立てば、暮らそうとは思わない。


カズは逃げ帰った。固い木を探して入ったが、開けた地を見て直ぐ。


「その、まさかだ。」



耶万やまの誰も、気付かないのか?


良山と違って、大きな川に近い。鳥が多く飛んでいるから、見つけやすい。舟で近くまで行けるし、沢伝いに、強い風が吹く。上に開けた地が、あるんだなと。


あんな山の上に、広くて平らな地があれば、思う。なぜ、村が一つも無いのかと。踏み入れば、気付く。なぜ、こんなに泥濘ぬかるむのかと。


きこりじゃなくても、狩り人じゃなくても、何かオカシイと思う。太い木があって、鳥が多い。なのに、なぜと。



耶万は、早稲わさ風見かぜみと同じ。逃げられない弱い人たちを、人とは思わない。虐げても、攫っても、奪っても良いと考えている。


霧雲山の統べる、山裾の地。


豊かで、多くの人が暮らしている。人も食べ物も、奪い尽くせる。思い通りに出来ると、信じて疑わない。




守らなければ。


やっと早稲を出られたのに、和やかに穏やかに暮らしてるのに。子は宝だ。怯えず飢えず、幸せになってほしい。


オレたちの手は、血塗ちまみれだ。強いられたとはいえ、多くの命を奪った。だからこそ、子らに同じ思いをさせられない。させたくない。



「消すか。」


センがボソッと言った。


「・・・・・・守りを固めよう。」




良山から見て、蔓川つるのかわの外。白縫川しらぬいのかわの外。南からなら、暴れ川か曲川まがりがわ。川を越えたら、仕留める。そのための罠だ。


隠れ里から貰ったのや、早稲から持ってきたのは、使わない。南の物が仕掛けてあれば、オレたちが近くで暮らしていると気付かれる。


川の外へは、古い手を使おう。


草を結ぶ、縄を張る、竹をしなえる。掛かれば転ぶし、当たれば痛い。ころんだ先、うずくまる先に、石器を仕掛ける。


良山の裾から川の間は、兎とシシの罠を増やす。獣が通るから、仕掛けても疑われない。


念のため、鳴子なるこを。


そうだな。渦の滝の東と、重ね崖の上に。流山の東に、村があると思わせる。



「逃げれば良し、進めば。」


シゲの声が低い時は、見えている。敵のむくろが。


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