6-76 解せぬ
風見は耶万に、伝えた。北の山奥に、豊かで広い地があると。多くの村と、戦好きな国があると。
風見は攻め、破れた。必ず、再び攻めて来る。
負けて諦めるようなら、早稲とは組まない。あの早稲と組んだ、というコトは、そういう事なのだ。
耶万。大王が治める、大国。
舟を使って、遠くの国と取り引きをしている。鉄は、どこも欲しがる。それを多く作り出す、耶万の力は強すぎる。
風見が耶万から手に入れた、アンリエヌの国で差し止められている薬。それに手を加え、さらに危なくして、早稲に試させる。
手を変え品を替え、繰り返し。多くの人から幸せを奪い、狂わせ、試させた。
痛みは消せるが、人を止めさせる薬。危なすぎて、逃げられない弱い人にしか、使わない。
人を何だと思っているのか。吐き気がする。
風見から流された、薬という名の毒。
戦い続ける獣に変わるまで、早稲で試された。思う出来になると、早稲から風見。風見から耶万へ。
良山に入った、耶万の六人。五人は死に、一人は捕らえられた。
耶万へは、誰も戻らない。人を人として扱わない耶万は、深く考えず送り続ける。
蔦山での戦。
早稲と風見が仕掛けた。その裏で、耶万が糸を。そう考えると、繋がる。
戦に敗れた風見は、引いた。なのに、魚川を通ることが出来ない。
骸を葬ろうとした時、念のため見張らせていた犬の遠吠えが。直ぐに気付く。攻めて来たと。
皆を山へ逃がし、窺おうと木に登った長は、慄く。
血走った目をした早稲が、舟でドッと押し寄せたのだ。
釜戸山と鑪山から、手伝いに来てくれていた狩り人たち。蔦山の長と話し合い、急いで戻り、伝えた。
釜戸社は、深川沿いと馬守。鑪社は雲井社、矢弦社、祝辺へ。乱雲山は妖怪を、天霧山は雲を。祝辺の守は木菟と鷲の目を放つ。
知らせを聞いたゲンが、村まで来て、話してくれた。
「思ったんだ。『孫の顔が早く見たい』って言ってたのに、遅いなって。」
センは幾度か、魚川か蔦山へ行こうとした。その度、シゲとノリに止められていたのだ。迎えが来るまで、待てと。
「それにしても、ヒトのヤツ。とんでもない事を。」
父は違うが、シンは兄として、ヒトを気にかけていた。
いつもニコニコして、慕われている末っ子。しかし、ジンとタツを合わせても足りない程、歪んでいる。
気づいたのは、ヒトが三つの時。
人好きのする顔でピョンピョン、飛び跳ねて喜んでいた。嬲り殺された、骸の上を。
「初めに持ち掛けたのは、ヌエらしい。」
顳顬を押さえながら、シゲが言った。
「え? アイツ今、釜戸山でカツと。」
カズが思わず、叫ぶ。
「ヒトに黙って、進めたんだろう。知られて、突き放されて、狩り人の子を攫った。」
「カツは狩りの腕を見込まれて、外されたんだろう。アイツがいなけりゃ、飢えるからな。」
シンに続いて、ムロが言う。すると、コタが呟いた。
「釜戸社の、祝に言わなかったのは、なぜだろう。」
・・・・・・。皆、考え込む。
「見たか聞いたかして、その薬を使えば、父を超えられる! とでも、思ったんじゃない?」
「そうかも。ヒトに敵わないから、やってやれって」
タケとコノが見合った。二人のカンは、外れない。そういうことかと、男たちが頷く。
「ノリが釜戸山で、何か聞いてくるだろう。それと、流山が気になる。」




