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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
旅立ち編
24/1622

2-14 執念深いと嫌われます。

「コウ、コウ、コウ。」


手に入れる。オレのモノにする。


「逃がさない。逃がさないぞ、コウ。」


待ってろ。このオレが迎えに行くんだ。


「オレのためにだけ、生きろ。オレの、オレの。」


オレの手足となれ!


「ハハッ、そうだ。」


オレのためにだけ。そうだ、そうだ!


「アハッ、アハハハハ。」


そうだ。そうだ!



「・・・・・・。」


聞かされるイヌの身にもなれよ。くどい、くどすぎる。犬もさ、まとわりつくよ。でも、勘違いしないでほしい。『好きな人に限る』つまり、選んでるんだ。覚えとけ。



「ハハハハッ、アァッハッハッハッハ。」


「コウ、オレのコウ・・・・・・。アァッハッハッハッハ。」


渡さない、誰にも渡さない。



「・・・・・・クゥ。」 ・・・・・・ハァ。


帰りたい。




鳥の谷は深い。そして、狭い。釜戸山に近づくほど、川は深くなり、勢いを増す。


大きな石にぶつかって、激しい飛沫をあげるそれは、攻めて撃つようである。滝を過ぎると、傾きが急になる。


昼も暗いが、夜になれば、もっと暗くなる。真っ暗闇だ。耳をつんざかんばかりの水音。冷え切り、鋭くなる。


腰まで漬かりながら、構うことなく進み続けるタツには、見えていないのかもしれない。周りが。流されそうになりながら、それでもついてくるイヌが。


血走った目で、ブツブツ言ったかと思えば、いきなり笑い出す。




「クゥッ・・・・・・ウウッ・・・・・・。」 オイッ・・・・・・、オイッ・・・・・・。


オレは犬だ!泳げるぞ、泳げる。でもな。こ、この流れは、キツイぞ。なっなっ流されるぅぅ。


「アハハハハッ、アァッハッハッハッハ。」


「・・・・・・。」


タツ。前から、何となく思っていた。けど、な。今、はっきりわかった。おまえに番がいないのは、他とは違ってるからだ。褒めてないぞ。好ましくないってことだ。


諦めろよ。あのコウって子、賢いぞ。お前なんか、見向きもされない。それにな、あの岩には、もう一人いた。頼れる人がいるだろう。犬のカンは当たるんだ。


そうだ、オレは犬だ。お前とは番になれない。番にするならメスがいい。あぁ、早く水から上がりたい。帰りたいよぉ。




ジャブジャブ、ジャブジャブ。ジャブジャブ、ジャブジャブ。ジャブ、ジャブ。ジャブッ、ジャブッ。



オイ、タツ!どうした?流されるぞ。っつ、わぁぁ!


「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ。」 シ、シヌカトオモッタ。


ブルブルブルッ~。


「クウ。」 ハァ。


あっぶねぇぇ。何か、硬くて冷たいのに当たったけど、水から出られた。もう泳ぎたくないっ!



「クゥン?」 エット?


クンクン。あ、いるな。タツのにおいだ。



「どこだっ!コウ。出てこい。今すぐに。」


オレは、優しいぞ。山で生きるより、オレといたほうが生きられる。生き残る術を教えてやる。


「コウ、コウ、オレはここだ。ここにいる。隠れてないで、出てこい。」


「・・・・・・クゥ。」 ・・・・・・ハァ。


いやいや、タツよ。コウはいないぞ。ここにはいない。オレはな、コウのにおいを覚えてる。信じろ。犬の鼻とカンを。


「ワン。」 キケ。


コウはな。岩にいた、たぶん子だ!その子といる。水から出て、崖の上の、風が吹き込んでこないところで、柔らかい布か何かに包まって、ぐっすり寝てるよ。きっと。



「クウ。」 ハァ。


いいなぁ・・・・・・。


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