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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
238/1632

6-72 大好きだよ


「悪かった。」


わかって頂ければ、それで。」


大蛇おろちとオミ、仲直り。良かった、良かった。




「で、オミ。なぜ隠れて居ったのだ。」


耶万やまの魂。触れただけで、こうなるからです。」


オミの右の前足が、真っ黒。足だけで無く、鼻先から目の辺りまで、黒ずんでいる。


大実神おおみのかみは。」


・・・・・・。


「肥えた地の、実りの神でらせられたか。」


「はい。」



八百万やおよろずの神の国、やまと。


神は望まれることにより、現われ出られる。神とて、全てに巧みなのでは無い。叶う事、叶えられぬ事が。


天つ神ならば、或いは。国つ神、しかも御隠れになりそうな・・・・・・。難しかろう。


中つ国のけがれであれば、我にも清められる。しかし、根の国。穢れた魂の、歪んだ穢となれば、我には。清めの力を持つ祝であれば。





「マルか。」


「はい。」



マルには、祝の力がある。清めと守りの力が。しかし今のマルに、祝の力が使えるかどうか。


あの子は、強い。良村よいむらに引き取られ、心に叩きつけられた痛み、負わされた傷も少しづつ癒え、言の葉も出るようになった。とはいえ、まだ早い。


釜戸社かまどのやしろの、ナガに頼め。祝の父だ。強い清めの力を持つ。おにときから行けば、早いだろう。


「それが、断られまして。」


けがれが、足から胸へと広がっていた。このままでは、闇に堕ちる。


「オミ、ここで待て。マルを連れて来る。」


「はい。宜しくお願いします。」




大蛇は急いで、良村へ戻った。パアッと明るい顔をして、マルが抱きつく。思わず、デレッ。


「キャ、キャン。」 ネエ、マルコモ。


大蛇だけ? いいなぁ。僕にもギュッとして!


「ハハハッ、羨ましいかい?」


「キャン。」 ウラヤマシイ。


わぁい! 抱っこ。大好きだよ、マル。




おかえり、大蛇。


「ただいま。マル、頼みがある。」


私に出来ることなら。


「オミをな。祝の力で、清めておくれ。」


オミ?


「我と初めて話した、小さな泉。石を三つ重ねた社に、小さな人の姿をした神が、在らせられた。」





マルコと初めて山歩きした、あの時の神様ね。


大実神。使わしめの犲が、オミさん。大蛇、オミさんと仲良しなのね。私も仲良く、なれるかしら。


ノリさんが教えてくれたわ。この山には、犬が多いって。私、ワンちゃん大好き。ウフフ。マルコったら、ねないの。


まぁ。オミさん、動けないの? 急いで向かわなきゃ。


清められるかどうか、分からない。けれど大蛇、私をオミさんの所へ、連れて行って。





「マルコは残れ。」


「キュゥゥゥ。」 ボクモイキタイナァ。


僕には清めの力なんて無いけど、マルの側にいたいよ。


「マルコに何かあれば、マルが悲しむ。」


ねぇ、マルコ。必ず戻るから、待っていてね。


「キャン。」 ハイ。

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