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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
237/1633

6-71 壊れた魂


霧雲山の統べる地は、水が豊富だ。あちらこちらに川が流れ、大きな湖もある。


霧雲山なんて、湖だらけ。全ての湖が、川で繋がっている。そんな山の周りにあって、水が少ないワケが無い。


良山よいやまの近くに湖はないが、泉や沢は多い。水が噴き出していたり、コンコンと湧き出ている。


となれば、崖も多くなる。雨がドッシャァと降ると、山が水を貯えきれず、ゴゴゴと崩れる。そうして崩れて出来た崖、崖、崖。


最も近い、大きな崖。それが崖の滝。崖の川を下ると、渦の滝がある。大きな崖の上からドバッと、滝壺の中へ水が落ち、ザァァと流れる。


滝壺に叩きつけられ、根の国へ旅立つ魂が叫ぶ。いつか必ず、戻ってくると。




「マル。村から出ては、ならぬ。我は出掛けるが、ぐ戻る。」


はい、村にいます。ねぇ大蛇おろち、悪いモノが来るの?


「その前に、けがれを祓う。」


私にも出来る?


「まだ、難しかろう。」


そう。でも私、諦めないわ! 化け王に認められるような、祝になるの。


「マルなら、きっと良い祝になる。」


ありがとう、大蛇。早く帰ってきてね。





死んだ五人の魂は、耶万やまへ戻らなかった。


良山に仕掛けられた罠に掛かり、傷を負う。ドクドクと血が流れ、止まらない。血の通る太い管が、切れてしまったのだ。





オレは今、どこにいるんだろう。何のために、ここにいるんだろう。なぜ、こんなことになったんだろう。帰りたい、もう疲れた。


北のめかんなぎおかんなぎを、耶万へ連れ帰らなければ。そうすれば、元に戻れる薬が貰える。戻って、家に帰るんだ。それで、それで・・・・・・。





今わに吸った薬で、痛みが消えた。しかし、血は止まらない。命を繋げなくなるまで、流れ出てしまう。


人でも獣でも、死ねば魂が抜け、生まれ育った地へ戻る。しかし、耶万の五人は違った。魂が壊れてしまったから。人が耐えられる量を、超えていたから。



壊れた魂は、北を目指す。人だった頃の全てを、忘れて。





「流され行けば、清められるものを。」


「グギャグギャァ!」


・・・・・、・・・・・、・・・・・。


「はて、困った。通じねば、届かぬぞ。」



憐れ。


根の国へと続く川、流されれば良いものを。人をめ、おに)にも妖怪にもなれず、根の国へも行かぬか。


一度ひとたび、穢れた魂は、祝にしか。もう、戻れぬ。守りたい者を、見守れぬ。


誰も止めては、くれなんだか。止められても、められなんだか。葬られてもなおあらがうか?


人には戻れぬ魂よ。このまま川の流れに身をまかせ、往け。





耶万の五人の魂を纏め、渦の滝壺へ投げ込んだ。崖の滝壺では流れなかった魂が、スッと根の国へ。



「コッコが案じた通りになったな。」


このままでは、この地は。マルは、マルだけは守らねば。何があっても、守り抜く。そのために!


「いつまで隠れて居る。出て参れ。」


・・・・・・。


「蛇を侮るな。臭っておるぞ、ワンコ。」


「ワンコではない、オミだ。」


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