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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
236/1633

6-70 帰っても、良いですか


祝が攫われたのに、取り戻せなかったんだ。そんなやしろに任せられない。しかも、子だ。


武田が出しゃばるかもしれないが、エイさまが決められた事。釜戸社、良村よいむら。敵に回したくないなぁ。オレなら、諦める。



「清めの力を持つ子を、あの武田が。」


一度ひとたび二度ふたたび、言って。」


「来るだろうな。『武田の子だ、返せ』と。」




武田は飯田と組んで、良村に仕掛けた。玉置、北山、東山が勝てなかったのに、戦い疲れた筈だと。で、あっさり負けた。逃げ帰った。


飯田、愚かだな。茅野の村は、良村と付き合いがある。茅野の狩頭が、取り持ったんだ。




飯田の国。飯田と茅野が一つになって、国になった。


飯田のおさは、忘れたんだろう。どう申し込んだのか。


飯田の村は、水が少なかった。泉が涸れ掛けていた。焦って、隣の村に頼み込む。村と村を合わせて、国にしてくださいと。


その時、交わした。決して、戦を起こさないと。茅野を巻き込まないと。


冬の戦に加わって、食べ物を取られた。玉置らに、ゴッソリと。それで困って、良村を攻めた。


頼れよ、助けてくださいって。茅野を通せば、助けてくれたさ。




「良村が頼めば、茅野が動く。」


「飯田の長は、代わったばかり。」



飯田にも狩り人はいる。ソコソコ強いが、茅野の狩り人に比べれば、天と地ほどの差がある。


飯田の狩り人は皆、若い。力でも技でも、決して勝てない。


いくら武田と繋がりがあるからと、茅野の許しなく暴れれば、飯田の国の長は、茅野の誰かが務めるだろう。


その方が、良い気がする・・・・・・。


飯田は茅野に睨まれている。だから、武田に頼られても、応えられない。




「なぁ、クワ。鴫山社しぎやまのやしろの、攫われた祝の話。」


「釜戸社から、問い合わせが来ればな。」



釜戸社かまどのやしろも、雲井社くもいのやしろも。祝辺の守が繋いでいる。


釜戸山にも乱雲山にも、忍びがいない。矢弦社やつるのやしろへ使いを出すか、使わしめに頼むか。なるさまとポコさま、仲良しだし。


祝のおおせなら、従うさ。雲から申し出る事じゃない。


雲ってのは、流れるモンさ。北へ南へ、東へ西へ。風に吹かれて、ゆったりと。


忍びだからね、裏切らないよ。敵はあざむくけど。




「祝女の孫、幸せか。」


蛇の妖怪に問われた。蛙、亀、鴫、蟹。水辺で生きた妖怪たちが、側からジッと見ている。


「良村にいるマルは、幸せそうだった。」



「会いに行くか。」


「行こう。」


「まずは、使いを。」


「驚くか。」


「そりゃ、驚くだろう。」


楽しそうに語らう、妖怪たち。驚くだろうな。マルを守る蛇、大蛇だぞっ。



糸の村から、弓の村へ戻った。ウサに呼ばれて、家に入ると・・・・・・。


帰っても、良いですか。


忍頭と力頭ちからがしら、そして長。ウサ、まさか。アァァァ、そうか。ツサの家に妖怪、向かわせたな。それで、こうなったと。



「聞こうじゃないか、クワ。」


弓長、ウサ。元、忍頭。とっても腹黒い。

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