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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
旅立ち編
23/1617

2-13 イヌの本音と悪夢

この谷は深い。日が当たるのは、滝と、木が生えてることくらいだ。おまけに狭くて、息が詰まる。


川の中を歩くから、体が冷えて、歯がガタガタ鳴りだした。このままじゃ凍えちまう。


イヌのヤツ、いい気なもんだ。毛むくじゃらで、涼しい顔してやがる。


にしても、コウのヤツ。滝をすぎりゃ、水の中を歩くしかない。どうする気だったんだ?


舟でも隠してたのか。いや、それはない。あの大水で流れが速い。持ってたとしても、子には漕げない。


「あぁぁ、眠くなってきた。」


こりゃ、まずい。急がないと。



「ワンワン! 」 オイ、ヒト!


なに、ウトウトしてやがる。


「ワワン、ワン! 」 オキロ。アルケ!


寝るな。オレだって、こんなところ歩きたくないんだ。毛皮着てても、寒いんだぞ。


「るっせぇなぁ。吠えるな。響くだろう! 」


バシャッ!!


「ワン、ワワン! 」 ミズ、タタクナ!


なっ、何しやがる!このぉ~!!


「クゥ~?」 アレェ~?


静かになった。




「殴るな、やめてくれ。痛い、痛いよ。」


冷たい風が入ってくる、歪んだ家。


「殴らないでくれ、やめてくれよ。」


また来た。父さん、どこ行ったのさ。早く帰ってきてくれよ!


「おなかがすいたよ。母さん。」


眠い。体が重い。父さん、父さん。どこにいるのさ!


「母さん、起きてくれよ。ねえ、起きて。」


細い腕がダランとして、勢いよく土を叩いた。


「母さん・・・・・・。」


息、してない。


「母さん!母さんっ。起きてよ、ねえ。起きて。」


「母さんっ、お願いだよ。起きて。」


「母さん、オレを一人にしないでくれよ。」


オレ、聞分けのいい子になるから。だから、お願いだよ。母さん、目を開けて。


「父さんっ、父さんっ。早く来て!助けて。母さんが、母さんが。」


お願いだよ。お願いだよ・・・・・・。




「ワン! 」 オイ!


生きてるか?


「ワン。ワワン、ワン! 」 オイ。オキロ、オイ!


こんなところで寝るなぁぁぁ。


「ワワワン、ワンッ。」 シンジマウゾ、オイッ。


オレを一匹にするな。せめて土の上まで連れていけ。

 



オレはイヌ。名は、ない。ただ、イヌと呼ばれている。他のみんなは、クロだの、シロだの、ノリコだの・・・。


ノリの仔犬だから、ノリコ。大きくなっても、ノリの子だから、そのまま。いいなぁ、名があって。羨ましい。


オレ、コイツ嫌い!でも、たまにエサをくれる。だから、起こしてやる。喜べ!


「ワンッ! 」 エイッ!


これで起きなきゃ、もう知らん。




バシャッ!ブクブクブク・・・・・・。ガバッ。


「ックゥ。」 エッ。


起きた。


「ゲホゴホ。ああぁ~っつ、嫌なもん見ちまった。コウのヤツ、覚えてろ。」


「クウ~ン?」 コウッテ?


あっ、そうだ。あの子だ。オレのこと『賢いイヌ』って言った。そうだ、オレは賢い!あの子、好きだ。


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