6-63 斯くなる上は
フクは悩む。耶万と、どのように向き合うか。
裁きの事は、釜戸山。他の地との話し合いは、乱雲山。霧雲山の統べる地を、御守りくださるのは、山守神。
霧雲山を守るのは、祝辺の守。多くの兵を引き連れて、攻めて来たのなら、霧雲山が動く。
けれど、この度は六人。生き残ったのは、一人。許し無く山に入ったのだから、止むを得ない。どうにも為らない。責められる謂れは無い。
良山に入らなければ、罠に掛かって死ぬ事も無かった。とはいえ、話が通じるのかどうか。
耶万。遥か南にある、大国。大王が治めるという、戦好きな国。地が揺れる前から、山裾の地に潜んでいた風見。悪い話しか聞かない、早稲。
早稲、風見、耶万。他にも北を目指し、攻め滅ぼそうとする村、国、大国が。守れるのか、いや違う。守らなければならない。決して引かない、負けない、負けられない。
はっきり言って、霧雲山は当てに為らない。
祝辺の守が守るのは、霧雲山。霧雲山の統べる地を守るのは、山守神。しかし冬の戦で、山守神。何を為された?
平良の烏を使って、急ぎ使わしめを集められ、『神は、見守るのみ。妖怪である皆に、託す』と。
見てますよ、よろしくネって。それは無いでしょう!
困り果て、祝辺に集まった使わしめたち。声を掛けられたのは、祝辺の守。神ではなく、化け王を頼り、整えて居られた事は、良かった。
あの冬の戦で、風見を退けられたのは、化け王の御力添えがあったから。・・・・・・次は無い。
化け王は、アンリエヌの王。他の国、遠く流れた地の王を、繰り返し頼るなど。
ならば、どうする。私たちの力で、退けられる? 否!
大王が治める国と、戦になれば負ける。
暴れ川の上に、豊かな地がある。知れ渡れば、滅ぼされる。いくら良村が付いてくれても、勝てっこない。
早稲から出た人たちは、強い。この地を選んで、暮らしてくれた。力になってくれる。けれど、それで退けられる程、甘くない。細かい違いはあっても、凡は合っているハズ。
乱雲山も天霧山も、妖怪に守られている。霧雲山は、祝辺の守が守る。他の山は?
釜戸山、日吉山など。人が守る山では、守り切れない。陽守山、天立山など。地の利を活かし、一度なら退けるか。
心消の影。天立山の月。霧雲山の木菟、鷲の目。天霧山の雲。忍びたちに力添えを・・・・・・。
頼むとすれば、戦のない時。戦が始まれば、忍びは使えない。狩り人より強いからと、送り込めない。
忍びを育てるには、時が掛かる。狩り人を育てるより、ずっと。もし強いれば、化け王が動く。
化け王が守りたいのは、霧雲山ではない。緋美や山平、心消など。虐げられ、生きるために逃げ出した人たち。
早稲から出た人が暮らす、隠れ里や良村も。
この地を守るために、乱雲山の祝として何が。話し合い? 駆け引き? 脅す? 唆す? ハァァァ。
私、祝なのに。心に悪だくみがある。セイやヒサのこと、言えないわ。
シッカリしなさい、フク。逃げても良くならない。寧ろ悪くなるだけ!
「フク。言伝の岩に着いたと、知らせが来たぞ。」
「ゴロゴロさま。私、悪い人になります。」




