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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
229/1634

6-63 斯くなる上は


フクは悩む。耶万やまと、どのように向き合うか。



裁きの事は、釜戸山。他の地との話し合いは、乱雲山。霧雲山の統べる地を、御守りくださるのは、山守神やまもりのかみ


霧雲山を守るのは、祝辺の守。多くのつわものを引き連れて、攻めて来たのなら、霧雲山が動く。


けれど、このたびは六人。生き残ったのは、一人。許し無く山に入ったのだから、むを得ない。どうにもらない。責められるいわれは無い。


良山よいやまに入らなければ、罠に掛かって死ぬ事も無かった。とはいえ、話が通じるのかどうか。




耶万。遥か南にある、大国おおくに大王おおきみが治めるという、戦好きな国。地が揺れる前から、山裾の地に潜んでいた風見かぜみ。悪い話しか聞かない、早稲わさ


早稲、風見、耶万。他にも北を目指し、攻め滅ぼそうとする村、国、大国が。守れるのか、いや違う。守らなければならない。決して引かない、負けない、負けられない。




はっきり言って、霧雲山は当てに為らない。


祝辺の守が守るのは、霧雲山。霧雲山の統べる地を守るのは、山守神。しかし冬の戦で、山守神。何を為された?


平良ひらの烏を使って、急ぎ使わしめを集められ、『神は、見守るのみ。妖怪である皆に、託す』と。


見てますよ、よろしくネって。それは無いでしょう!



困り果て、祝辺に集まった使わしめたち。声を掛けられたのは、祝辺の守。神ではなく、化け王を頼り、整えて居られた事は、良かった。


あの冬の戦で、風見を退けられたのは、化け王の御力添おちからぞえがあったから。・・・・・・次は無い。




化け王は、アンリエヌの王。他の国、遠く流れた地の王を、繰り返し頼るなど。


ならば、どうする。私たちの力で、退けられる? いな




大王が治める国と、戦になれば負ける。


暴れ川の上に、豊かな地がある。知れ渡れば、滅ぼされる。いくら良村よいむらが付いてくれても、勝てっこない。


早稲から出た人たちは、強い。この地を選んで、暮らしてくれた。力になってくれる。けれど、それで退けられる程、甘くない。細かい違いはあっても、おおよそは合っているハズ。



乱雲山も天霧山も、妖怪に守られている。霧雲山は、祝辺の守が守る。他の山は?


釜戸山、日吉山など。人が守る山では、守り切れない。陽守山やもりやま天立山あまたてやまなど。地の利を活かし、一度なら退けるか。



心消こけしの影。天立山の月。霧雲山の木菟ずく、鷲の目。天霧山の雲。忍びたちに力添えを・・・・・・。


頼むとすれば、戦のない時。戦が始まれば、忍びは使えない。狩り人より強いからと、送り込めない。


忍びを育てるには、時が掛かる。狩り人を育てるより、ずっと。もしいれば、化け王が動く。



化け王が守りたいのは、霧雲山ではない。緋美あけうま山平やまたいら、心消など。虐げられ、生きるために逃げ出した人たち。


早稲から出た人が暮らす、隠れ里や良村も。




この地を守るために、乱雲山の祝として何が。話し合い? 駆け引き? 脅す? そそのかす? ハァァァ。


私、祝なのに。心に悪だくみがある。セイやヒサのこと、言えないわ。


シッカリしなさい、フク。逃げても良くならない。むしろ悪くなるだけ!




「フク。言伝ことづての岩に着いたと、知らせが来たぞ。」


「ゴロゴロさま。私、悪い人になります。」

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