6-57 知らないって、コワイ
「大実神。」
「喜ぶのは、まだ早い。」
使わしめオミ、シュンとする。
「蛇神、大蛇。前の牙滝神だ。継ぐ子に社を任せ、愛し子を。隠が憑いた祝、祀るとは思えぬ。」
「この地で再び、人が暮らし始めたのです。望みはあります。信じましょう。信じる神は、救われます。」
熱弁を振るうオミ。
村にシゲたちが戻った。
「ただいま、マル。」
「おかぁえい。のぉい、さぁん。」
満面の笑みで迎えに来てくれたマル。ノリだけではなく、シゲのカズも、ニッコニコ。
「先より、話せるようになったな。」
「あいがぁおう。かぁう、さぁん。」
カズに褒められ、ニッコリ。
「家に入ろう。雨が降るよ。」
「はぁいっ。」
シゲにも撫でられ、二コッ。
大人たちは、これからの事を話し合うため、集まった。子らは子らで、話し合う。
詳しくは聞かされていないが、山に悪い人が入って来たことは、知らされた。マルが隠に、オロチ様に守られていることも。
「ここから乱雲山まで、どれくらいかかる?」
良山に村を作る前から、舟で来ていたノリ。シゲだって、狩り人。熊実や鳥の谷など、狩りに来ていた。しかし、良村の誰よりもノリは、この地を知っている。
「舟で、丸一日。遠いからな。底なしの湖までは、流れに乗るから早い。深川がな、かかるんだ。子狐の川と雷川、狭くて深い。流れも早い。クネクネしているから、深川ほどじゃない。それでも、流れに逆らって進むから。」
「蔦山へ行くのも、かかったな。」
センが、ボソッと言った。
「蔦山は、近くに子狐の川が流れている。でも、乱雲山は違う。雷川の源の泉から、雲井社の洞まで行く。決められた道しか、歩けない。妖怪が守ってるからな。逆らえない。しかも、かなり歩く。」
「ノリ。行ったこと、あるのかい?」
カズに問われ、ニタッと笑って答える。
「源の泉までな。ノリコが止めとけって言うから、降りなかった。」
ノリは、大の犬好き。犬と心で話せます。
「それは良かった。霧雲山、乱雲山、天霧山。どの山も祝の許しなく入れば、命が吸われる。」
雲の一言で、良村の皆が、黙り込んだ。
「怖いのは人で、妖怪たちは楽しいぞ。」
そうそう。ゴロゴロとか、キラとか、コンとかネ。
「まぁ、何だ。乱雲山の、狩り人に聞いたんだ。泉から洞まで、かなり歩くって。」
思い切って、ノリが話し出す。
「そりゃもう、歩くよ。雲は、泉から頂まで行ける。矢弦社の、許し札があるから。けどまぁ、この度は洞まで、行くしかないだろう。」
「なぁ、シゲ。耶万さ、あのまま運ばないか。二人で舟を漕げば、引っ張れるだろう?」
カズは案じていた。木菟でも、ああなるんだ。ピタッと重ねたのを少し上げて、隙間を作れば息が出来る。
「木菟は動けるまで、待つ。薬には、害を齎すものがある。毒消しが効いたのか、確かめるまで。見張りは、鷲の目に任せれば良い。耶万は、あのまま運べ。」
「ブラン様。この件、守へは。」
「我が伝えよう。」
「仰せのままに。」
雲が首を垂れると、ブランはサッと、姿を消した。




