6-56 兆し
・・・・・・。・・・・・・?
「何だ。」
聞こえますか?
「・・・・・・マル、だったか。」
はい、そうです。マルです。
「我に何用か。」
ブランさん。良村のこと、好きですか?
「・・・・・・嫌いではない。」
私は大好きです。良山は、良い山です。良村は、良い村です。みんな優しくて、良い人です。ニコッ。
「そう、だな。・・・・・・で。」
大蛇が教えてくれました。私には祝の、清めと守りの力があるって。だから私、この山と村を守りたいの。
「そうか。努めよ。」
ブランさんは、化け王の目になって、霧雲山の統べる地を、見張ってるんですか?
「そうだ。」
祝辺の守って、どんな人ですか?
「マル、守になりたいのか。」
私は良山を守るの。霧雲山なんか、知らない! 知ってるけど、そういうんじゃなくて・・・・・・。
「王の器ではないが、マルは良い祝になる。」
ありがとう。化け王に認められる、良い祝になるわ!
良い娘だと思った。体中に傷を負っている。心も幾度か、壊されている。しかし、魂は美しい。
「・・・・・・大蛇。」
「何だ。」
「元は神であろう。なぜ人に付く。」
「人に付いたのではない。マルに付いたのだ。」
隠が守る祝か。孤独と絶望から抜け出て、光の中へ。カー様とエン様のよう。
・・・・・・王とは、孤独だ。
化け王。収集の才を持って生まれただけで疎まれ、恐れられる存在。エン様亡き今、カー様を包む光は、どこに。
化け王は皆、短命であった。孤独に耐え切れず、自ら命を絶たれたと。
天寿を全うされたのは、ジル王とエマ女王のみ。カー様は、不老不死。配下には妖怪も。長く生きるとはいえ、いつかは。
永遠に生きる。愛しい全てを見送り、それでも死ねない。どれほど深い孤独に囚われるのか。考えただけで、恐ろしい。
我は妖怪。この命ある限り、カー様の御側に。叶うなら、カー様と共に・・・・・・。
マル。其方は幸せだ。仔犬、マルコだったか。犬は死ぬが、大蛇は永遠に生きる。たった一人で、孤独に苛まれながら死ぬことはない。
「マルよ。」
はい。
「兆しを、見逃すな。」
兆し?
「事の起ころうとする、前触れのことだ。」
前触れ。
「兆しを感じ、兆しを見る。然為れば、守りたいものを守る、大きな助けになる。」
はい。ブランさん、ありがとう。私、みんなを守ります。ニコッ。




