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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
旅立ち編
22/1615

2-12 好き!それは偉大

ゴロさんが、うんうんと首を縦にふりながら言った。


「そうとも。な、好きっていいだろう。」


心がポカポカ、あったかくなった。


「いいね。」


そうだ、好きなんだ。オレ。ツウのこと、好きなんだ。これから、もっと好きになるんだ。それで、わかるようになるんだ。


うれしいな。楽しいな。幸せだな。ツウも同じだといいな。そうなら、とってもうれしいな。


「コウ。村を作るってのは、とても、とても生きるってことだ。苦しくても、辛くても、諦められない。そんな、大きなことだ。」


うん、そうだ。


「ゴロさん。オレ、諦めない。」


ツウが好きだ。ツウと生きる。幸せになる。


「そうだ。そのために釜戸山の村に行って、その目で見て、学べ。」


学ぶ。そうだ!知らないこと、わからないこと、すべて。見たことがないものを見て、知らなかったことを知る。


豊かに生きて、死ぬ。爺様のように強く、優しく、美しく。


「生きていれば、いろいろある。生きていれば、間違える。でも、生きていれば、どうにかなる。」


そうだ、負けるもんか!



「コウ、オレのカンだけどな。」


タロさんが、苦しそうな顔をして言った。


「タツは、コウを諦めない。」


「タロさんも、そう思いますか。」


「思う。人に対して、言っちゃいけないのは知っている。でも、言う。アレはバケモノだ。」


ゴクリとつばを飲み込んだ。


「生まれついたのか、早稲の村が変えたのか。そんなこと、どうでもいい。ただ。」


思いつめたような顔をした。


「あの村には、タツみたいなのが、他にもいる。」


あんな人が、他にも!



頭の中が真っ白になった。心の中には、重くて暗いものが渦を巻き、オレを飲み込もうとしている。どうしよう、怖い。


「コウ、恐れるな。」


オレの手を握りながら、優しい声で言ってくれた。ゴロさんの手は、大きくて、あたたかい。


「コウも、ツウも、生きるんだ。ずっと、ずっと幸せに。爺様、婆様になって、お迎えが来るまで。その時まで、生きるんだ。」



釜戸山は、火の山だ。そんな山で生きるには、強いだけじゃない、賢いだけでもない、やわらかい、そういう生き方がある。


そうでなきゃ、生きられない。


オレは生きる。悪い人からツウを守る。守って、戦って、そうして生きる。諦めない。負けない。決めた。


「行きます。釜戸山へ。」


良い目だ、コウ。




夢を見た。白くて、ふわっと光っている、そんな中から、誰かが手をふっている。


あっ、爺様だ。ミツもいる。笑ってる。よかったな、会えたのか。もう泣くな。ずっと、ずっと笑ってろ。


兄いな、好きな子がいるんだ。覚えているかい。となりのツウだよ。


好きっていいな。ポカポカするんだ。もし、また生まれてきたら、兄いのところへおいで。


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