2-12 好き!それは偉大
ゴロさんが、うんうんと首を縦にふりながら言った。
「そうとも。な、好きっていいだろう。」
心がポカポカ、あったかくなった。
「いいね。」
そうだ、好きなんだ。オレ。ツウのこと、好きなんだ。これから、もっと好きになるんだ。それで、わかるようになるんだ。
うれしいな。楽しいな。幸せだな。ツウも同じだといいな。そうなら、とってもうれしいな。
「コウ。村を作るってのは、とても、とても生きるってことだ。苦しくても、辛くても、諦められない。そんな、大きなことだ。」
うん、そうだ。
「ゴロさん。オレ、諦めない。」
ツウが好きだ。ツウと生きる。幸せになる。
「そうだ。そのために釜戸山の村に行って、その目で見て、学べ。」
学ぶ。そうだ!知らないこと、わからないこと、すべて。見たことがないものを見て、知らなかったことを知る。
豊かに生きて、死ぬ。爺様のように強く、優しく、美しく。
「生きていれば、いろいろある。生きていれば、間違える。でも、生きていれば、どうにかなる。」
そうだ、負けるもんか!
「コウ、オレのカンだけどな。」
タロさんが、苦しそうな顔をして言った。
「タツは、コウを諦めない。」
「タロさんも、そう思いますか。」
「思う。人に対して、言っちゃいけないのは知っている。でも、言う。アレはバケモノだ。」
ゴクリとつばを飲み込んだ。
「生まれついたのか、早稲の村が変えたのか。そんなこと、どうでもいい。ただ。」
思いつめたような顔をした。
「あの村には、タツみたいなのが、他にもいる。」
あんな人が、他にも!
頭の中が真っ白になった。心の中には、重くて暗いものが渦を巻き、オレを飲み込もうとしている。どうしよう、怖い。
「コウ、恐れるな。」
オレの手を握りながら、優しい声で言ってくれた。ゴロさんの手は、大きくて、あたたかい。
「コウも、ツウも、生きるんだ。ずっと、ずっと幸せに。爺様、婆様になって、お迎えが来るまで。その時まで、生きるんだ。」
釜戸山は、火の山だ。そんな山で生きるには、強いだけじゃない、賢いだけでもない、やわらかい、そういう生き方がある。
そうでなきゃ、生きられない。
オレは生きる。悪い人からツウを守る。守って、戦って、そうして生きる。諦めない。負けない。決めた。
「行きます。釜戸山へ。」
良い目だ、コウ。
夢を見た。白くて、ふわっと光っている、そんな中から、誰かが手をふっている。
あっ、爺様だ。ミツもいる。笑ってる。よかったな、会えたのか。もう泣くな。ずっと、ずっと笑ってろ。
兄いな、好きな子がいるんだ。覚えているかい。となりのツウだよ。
好きっていいな。ポカポカするんだ。もし、また生まれてきたら、兄いのところへおいで。




