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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
217/1633

6-51 思い出せ


「待たせたな、クロ。」


「ワン。」 キニスルナ。


「さて、と。コイツ、運んでくれ。オレは、いろいろ持つよ。」



木菟ずくも鷲の目も、黙って頷いた。霧雲山の忍びとして、誇りを持って働いている。誰よりも強いと思っていた。しかし、今は・・・・・・。


上には上がいる。天霧山あまぎりやまの忍びには、勝てる気がしない。見えないものが、見えるのだから。


他の地にも、忍びはいる。霧雲山、天霧山の他にも、いるのだろうか。きっと、いるだろう。気づかなかっただけで、擦れ違ったことも・・・・・・。


聞きたい、確かめたい、会ってみたい。でも、聞けない。今、聞くことではない。


耶万やま、気を失っているようだが、偽っているかもしれない。盗み聞かれ洩れれば、取り返せない。憂いの種は、少しでも除く。




「ワン、ワワンワン。」 モウスグダ、キヲヌクンジャナイゾ。


運んでる二人、心の臓がバクバクしてる。重いのかな?



谷へ下りる道の上、滝を目指して、黙って進む。


良山よいやまの風は、クルクルと流れを変える。山から谷へ吹いていた風は、道に沿って流れ出す。初めに息苦しさを感じたのは、木菟だった。


耶万の足を、鷲の目が。手を木菟が持って、運んでいた。つまり、風上を鷲の目。風下を木菟。間に耶万。どこかに隠し持っていた薬が、風に乗って木菟へ。



「ワン! ワワワンワン。ワン、ワワン。」 トマレ! キモチワルイヤツダ。カゼダ、イキスルナ。


先を歩いていたクロが、思い切り吠えた。


「二人とも、止まれ。耶万から手を離せ。今、ぐ!」


雲が叫ぶように言った。


「ワン! ワワワン。」 ノリコ! ソコニイロ。


上にいるノリコたちに知らせ、タッと駆け寄った。木菟が膝をつき、肩で息をしている。肩口の衣を咥え、風上へ引っ張り、知らせる。


「鷲の目、風上へ。クロもだ。木菟、しっかりしろ。」


雲に担がれ、直ぐ風上へ運ばれた。





「待て、シゲ。近づくな。」


「遠くから」


「聞くんだ。あの吠え方、何かが起きるか、起きたんだ。ノリコを見ろ。風を読んでる、待ってるんだ。」


「風。まさか、決して使ってはならないと、化け王がおっしゃった、人を壊す薬か。」


「分らない。けどな、何かあったんだ。思い出せ、マルが言った事、コノとタケが言った事を。」


そうだ、そうだった。



危ないと解って、行ったんだ。呼べば、離れていてもクロは戻る。下に、良村よいむらの人はいない。助けを求められれば、出来る限り。それまでは、ここで。



マルが、フラフラになりながら伝えてくれた。『悪いモノを吸って、傷つけることしか出来ない。近づけば、殺されかねない』と。


あの時、三人とも、いた。念のため、毒消しが入った竹筒を、クロの背負子しょいこに乗せた。効くかどうか、分らないが。



木菟も鷲の目も、祝辺の守の使い。責められても止めたと、雲が伝えてくれるはず。



「ありがとう、ノリ。」


「ん。良かった。」

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