6-48 知りたいか?
手分けして探し、捜した。勢いよく転げ落ちたのだろう。いろいろ、あった。重い物は近くに。軽い物は、少し離れて。
「崖の木に、剣が引っかかってた。さらに上、ほら。」
弓は、良くある物だった。しかし、矢は。鉄の矢尻、しかも鋭い。
雲が見つけた品を見て、霧雲山の二人が驚く。こんなに鉄を使うなんて、漆では着かないはず。ということは、燃える水か?
こんなに重い矢を、この弓で。もし当たれば、射貫くのではないか。それに何だ、この剣。鉄の塊じゃないか! これだけの鉄、どうやって集めた。
霧雲山の統べる地にも、鉄を作る村がある。鑪山の鉄は、強い。しかも、鋭い。
長が言っていた。鉄を作ることは、山を荒らすことだと。木を切って、土を掘って、運び込む。
山の神様が御怒りになっても、申し開き出来ない。いつ何があっても、おかしくないと。
「薬は、ないか。衣、体に巻いた布、髪。」
雲が呟く。
「あの目。」
鷲の目がボソッと言った。
「花から作ったのに、他のを混ぜたんだろう。言の葉を、話せないかもしれない。」
涼しい顔をして、雲が言う。木菟も鷲の目も、しばらく何も言えなかった。
「痛みを消すのに効く草を、煎じて、煎じて。濃くして飲んでも、ああは・・・・・・。」
「毒のあるキノコを、口にしても・・・・・・。」
鷲の目は野呂、木菟は野比の忍びであり、祝辺の守の使い。北へ南へ、東へ西へ。霧雲山の統べる地を、飛ぶように駆け巡る。舟を使うことは、殆ど無い。
極めて稀に、他の山が統べる地へ、出ることがある。出るといっても、一山くらい。しかも必ず、平良の烏がついて来る。
玉置、三鶴、北山など。戦好きな国もあるが、山裾の地は穏やかで、暮らしやすい。
何かあれば、釜戸山へ。釜戸社の、祝が裁く。人には分からない事なら、乱雲山。雲井社の、祝に託す。どちらにも頼れない事なら、霧雲山。祝辺の守が、直ぐに動く。
風見が攻めて来た時は、どうなることかと。幸い、化け王の才で、何とかなった。
ブランさまの話では、“従兄君との約束”があるから、力添えくださるそうだ。『いつ見限られても、おかしくない』とも。
化け王は、いろいろ教えて下さった。人が人でなくなる、決して使ってはならない薬・・・・・・。使えば、どうなるのか。使い続ければ、どうなるのか。
「雲は、その花。見たことは?」
「ないね。そんなモノ、見たくもない。」
木菟に問われ、とても嫌そうな顔をして答えた。
「話せないかもしれない、とは。」
鷲の目が、悩みながら、問いかける。
「花から作ったヤツを、使い続ければな。頭が、やられる。ガタガタ震えて、ウゥウゥ呻って、涎を流して、言の葉が通じなくなる。」
「見たのか?」
「化け王から伺った。知りたいか? 他にも。」




