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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
214/1634

6-48 知りたいか?


手分けして探し、さがした。勢いよく転げ落ちたのだろう。いろいろ、あった。重い物は近くに。軽い物は、少し離れて。



「崖の木に、剣が引っかかってた。さらに上、ほら。」



弓は、良くある物だった。しかし、矢は。鉄の矢尻、しかも鋭い。


雲が見つけた品を見て、霧雲山の二人が驚く。こんなに鉄を使うなんて、うるしでは着かないはず。ということは、燃える水か?


こんなに重い矢を、この弓で。もし当たれば、射貫くのではないか。それに何だ、この剣。鉄の塊じゃないか! これだけの鉄、どうやって集めた。



霧雲山の統べる地にも、鉄を作る村がある。鑪山たたらやまの鉄は、強い。しかも、鋭い。


おさが言っていた。鉄を作ることは、山を荒らすことだと。木を切って、土を掘って、運び込む。


山の神様が御怒りになっても、申し開き出来ない。いつ何があっても、おかしくないと。




「薬は、ないか。衣、体に巻いた布、髪。」


雲が呟く。


「あの目。」


鷲の目がボソッと言った。


「花から作ったのに、他のを混ぜたんだろう。言の葉を、話せないかもしれない。」


涼しい顔をして、雲が言う。木菟ずくも鷲の目も、しばらく何も言えなかった。



「痛みを消すのに効く草を、せんじて、煎じて。濃くして飲んでも、ああは・・・・・・。」


「毒のあるキノコを、口にしても・・・・・・。」




鷲の目は野呂のろ、木菟は野比のびの忍びであり、祝辺の守の使い。北へ南へ、東へ西へ。霧雲山の統べる地を、飛ぶように駆け巡る。舟を使うことは、ほとんど無い。


極めてまれに、他の山が統べる地へ、出ることがある。出るといっても、一山ひとやまくらい。しかも必ず、平良ひらの烏がついて来る。



玉置、三鶴、北山など。戦好きな国もあるが、山裾の地は穏やかで、暮らしやすい。


何かあれば、釜戸山へ。釜戸社かまどのやしろの、祝が裁く。人には分からない事なら、乱雲山。雲井社くもいのやしろの、祝に託す。どちらにも頼れない事なら、霧雲山。祝辺の守が、ぐに動く。



風見かぜみが攻めて来た時は、どうなることかと。幸い、化け王の才で、何とかなった。


ブランさまの話では、“従兄君いとこぎみとの約束”があるから、力添えくださるそうだ。『いつ見限られても、おかしくない』とも。



化け王は、いろいろ教えて下さった。人が人でなくなる、決して使ってはならない薬・・・・・・。使えば、どうなるのか。使い続ければ、どうなるのか。




「雲は、その花。見たことは?」


「ないね。そんなモノ、見たくもない。」


木菟に問われ、とても嫌そうな顔をして答えた。


「話せないかもしれない、とは。」


鷲の目が、悩みながら、問いかける。


「花から作ったヤツを、使い続ければな。頭が、やられる。ガタガタ震えて、ウゥウゥ呻って、よだれを流して、言の葉が通じなくなる。」


「見たのか?」


「化け王から伺った。知りたいか? 他にも。」

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