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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
212/1633

6-46 雲です


祝辺の守が守る、霧雲山。妖怪たちが守る、乱雲山。隠たちが守る、天霧山。


霧雲三大霊山は全て、深い山の奥にある。許しなく入れば、命がない。そういう山だ。



「天霧山の、雲です。はじめまして、おさ。」


良村よいむらの長、シゲだ。雲とは、名かい?」


「呼び名だ。霧雲山では、木菟ずくと鷲の目。天霧山では、雲。名は別にあるが、山の外では。忍びってのは、そういうモンさ。」


「そうか。で、化け王のおおせか。」


「いいや、ブラン様。良山よいやまに、変なのが入ったって。」


「その鳥。化け王の、使わしめか?」


「神に仕えるのが、使わしめ。我は化け王の臣下である。」


赤い目をした、白い鷲。ゲンから聞いていた通り。蔦山の人には、聞かせない方が良いだろう。


「入ってくれ、雲。ブラン様、こちらへ。」




「変なの、というのは。」


耶万やまの、人でなしさ。」


「人でなし?」


「人をめたヤツ。アレは、もう戻れない。」


「海の向こうにある、争いの絶えない国で使われている、痛みを消す薬か? 使うと、人が人でなくなる。その気になれば、手に入れられる。決して使ってはならないと、化け王がおっしゃった。」


「隠れ里の長から、聞いたのか。」


「そうだ。」




風見かぜみがソレを作って、使っている?」


「木菟よ、それは無い。そもそも、花が無い。」


「花?」


「やまとには咲いていない。いつか入ってくるかもしれないが、今は無い。」


「そんなモノを使ってまで、来たのか。」


鷲の目が呟く。




「マルさん。おには他にも、何か?」


雲に問われ、頷く。


「わぁうい、もぉお、すぅってぇ。きぃずぅ、つぅえるぅ、おとぉ、しぃあっ、でぇきぃ、なぁい。ちぃか、づぅえばぁ、こお、されぇっ、かぁえ、なぁいっ。」


ハッ、ハッ、ハッ。い、言えた?


「マル、水よ。飲んで。」


コノが、水の入った瓢箪ひょうたんを持ってきてくれた。コクンと頷き、ゴクゴク。フゥ。


「こう言ったんだ。『悪いモノを吸って、傷つけることしか出来ない。近づけば、殺されかねない』って。そうだよな、マル。」


ノリに言われ、コクンと頷く。


「二人とも、止めても行くんだろう?」


木菟と鷲の目、ビックリ。


「オレも行くよ。霧雲山の忍びは強い。でも、アレはなぁ・・・・・・。三人なら、何とかなるだろう。捕まえるだけ。調べるのは、妖怪に任せろ。」


「妖怪?」




「乱雲山だよな。南から行くには、霧雲山は遠すぎる。天霧山より、乱雲山の方が早い。舟で行く、違うのか?」


木菟も鷲の目も、馬守で馬を借りて、霧雲山へ連れて行こうと考えていた。


「耶万を捕まえて、川まで運ぶ。舟に転がして、丸太に縛りつける。森川から鮎川、深川。子狐の川に入って、雷川。乱雲山へは、そうやって行くんだ。」


ノリ、助け舟を出す。


「裁きなら、釜戸山だ。耶万のは、違う。話し合いで決めることだ。だから、乱雲山。それに、馬じゃ危ない。縛っても暴れる。」


シゲに諭され、考えた。

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