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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
205/1634

6-39 心強い味方


女のカンは、鋭い。タケもコノも、あの早稲わさで、穢されることなく、生き残れた。二人とも、運が良かったからではない。カンが、恐れ戦慄わななく程、鋭かったからだ。


コタが生き残れたのも、コノのカンを信じたから。はじめは、妹を悲しませなくなくて、言う通りにした。けれど、幾度いくたびも助けられれば、考えも変わる。


タケの兄は、違った。くりかえし伝えたのに、聞き流した。そして、あっけなく死んだ。


コノはフウに気に入られた。早稲の、長の母である。村の誰もが、コノを避けた。


タケはゲンから、狩りを教わった。ゲンがいない時は、シゲから。二人とも、強い狩り人だ。タケも、避けられた。



夜、親のいない子たちは、同じ家で眠る。女の子と男の子は、別。幼子で、歳の近い兄弟が生きていれば、同じ家で眠る。ただし、入口で。


不届き者が、少しでも近づくと、迷わず逃げた。二人のカンを信じなかった子たちは・・・・・・。





「行くか。みんな、どうだい?」


「シゲは、村に残ってくれ。行くならカズとオレ、ノリコ。どうだい?」


ノリが言った。


「そうだな。念のためクロを連れて、離れて守るよ。」


続けて、ムロ。


「生きてたら手当てして、目隠し。森川の舟寄せに、舟を浮かべて、転がそう。川の真ん中なら、獣に襲われることは、まぁ無い。」


さらに続けて、セン。


「そうだな。耶万やまが来たことは、霧雲山の誰かに言おう。そろそろ、木菟ずくか鷲の目が来る頃だ。」


コタが言い切る。


「なぁ、シゲ。ソイツ、霧雲山に渡すのか?」


乱雲山みだれぐもやまへ連れて行く。裁くことじゃない、話し合うことだ。それに乱雲山の、雲井社くもいのやしろには、考えが読める祝がいる。」


タケに問われ、答えた。


「ねぇ、さない? 探すの。」


コノが、祈るように言った。




コン、コンコン。


マルが拳で、入口の柱を、控え目に叩いた。


「キャン、キャキャン。」 ノリサン、デテキテクダサイ。


霧雲山の人が来ました。悪い人では、ありません。


「マルだ。誰か来たんだろう。見て来るよ。」


さすが、ノリ。鳴き声だけで、マルコだと!


「誰かな?」


マルの頭を撫でながら、優しく言う。ニッコリ笑うマルの足元で、マルコが尾を振っている。




「ワン。」 ズクデス。


話し合いをしていた家から離し、話を聞かれないように、木菟の足元で、通せん坊をしていたノリコ。


どんな話をしているか、犬には分からない。けれど他の人には、聞かせない方が良いのだろうと思った。


「キャン。」 ウゴクナ。


コハルはグルグル、走り回っている。


馬守の犬は、人でも馬でも何でも、逃さないように、走って追い込む。懐いているわけではない。




「そうか、分かった。」


ノリコとコハルに声を掛け、ニッコリ。それから、木菟に言う。


「少し、そこで待ってくれ。」


ノリが家に戻った。しばらくして、シゲが出た。


「中で話そう、木菟。」


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