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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
202/1635

6-36 賢明な判断


フンフン、フフゥンと歌うように、軽やかに歩くマル。マルコもルンルン。大蛇おろちも楽しそう。



「キュウゥ? キャンキャン。」 ナンダロウ? シラナイニオイガスル。


マルコは許しなく、駆け出さない。人の子はぐ、転ぶから。大好きなマルを守るため、釜戸山で学んだ全てを活かしている。


良村よいむらのでは、ないな。」


悪い人?


「足を滑らせて、転げ落ちたようだ。」


助けなきゃ!


「悪い人でも、助けるのか?」


大蛇・・・・・・。その、悪い人なの?


「この山は冷える。夜は凍えるほど、冷える。なのに、いる。ということは、罠に掛かって動けぬか、潜んで居るかだ。」




「ん? どうしたマルコ。何か、いるのかい?」


「キャン、キャキャン。」 イマス、ハナレタトコロニ。


変な臭いがします。気持ちが悪いです。


「ノリコ、コハル。どうだ、臭うか?」


釜戸山の犬は、他の犬より鼻が利く。まだ仔犬だが、いろいろアレコレ、教え込まれたはずだ。



「ゥワン、クゥゥ。」 コノシタニ、イルヨ。


ずっと下かな、クンクン。ノリさん、ココ!


「踏み外したか。マル、ここで待てるな。」


コクンと頷いた。


「マルコ。マルを守れ、離れるな。分かったか?」


「キャン。」 ハイ。


「コハル。マルコと共に、マルの側にいろ。」


「キャン。」 ハイ。


待ってます。いってらっしゃい!




「ノリコ、行けそうか?」


「ワン、ワワン。」 ハイ、イケマス。



滑り落ちないように気をつけながら、木の根元に括りつけた縄を掴み、ゆっくりと。しばらくして、マルは急に怖くなった。少し下りた辺りで気づき、ノリが言った。


「戻ってくるよ。だから、そんな顔するな。」


コクンと頷き、ニコッと笑った。




「ク、クゥゥン。」 ノリサン、もどろう。


スゴイ傾きから、いきなり崖っぷち。いくらノリさんでも、一人じゃ・・・・・・。


「こりゃ危ない。戻ろう、ノリコ。」


「ワン。」 ハイ。


オヨヨ。あれ? す、滑るぅ。


「ノリコ、おいで。」


前足の付根あたりに、グルッと縄が巻かれた。


「痛くないかい?」


「ワン。」 ハイ。



木に結わえられた縄に掴まりながら、滑らないように上がるノリさん。オレに巻かれた縄は、ノリさんの腰にも巻かれている。


ノリさんが引っ張ってくれるから、滑りながらでも登れた。引っ張り上げてもらって直ぐ、マルがノリさんに抱きついた。


ウン、許す。オレは、後で良い。




「戻ったよ、マル。」


頭を撫でてもらい、ニッコリ。


「村に戻ろう。オレ一人じゃ、下りられない。」


コクンと頷くマル。マルコとコハルは、ノリコのそばで仲良く、尾を振っていた。


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