6-35 信じて、待とう
日が落ちる頃、良山に着いた。良村に着いた時、辺りは真っ暗。良い子たちは、グッスリ。
マルも良い子だが、目をこすりながら起きていた。大蛇からも、休むように言われた。それでも、伝えたかったのだ。『おかえり』と。
マルは話せない。だからギュッと抱きしめ、ニッコリする。
勢い余って、ガバッとなったが・・・・・・。
「二人とも、お腹が空いたろう。夕餉にしよう。」
「ありがとう、シゲ。あのな、蔦山の長から、言伝があるんだ。ツネさん、起きてるかい?」
「少し前、児が泣いたから、起きてると思うよ。」
「そうか。ちょっと行ってくる。」
母子ともに健やかだが念のため、コノとタケが代わり合って、産屋で寝起きしている。
アサは、子が生まれた日の昼、帰った。馬守だけではなく、他の村からも呼ばれる“かかさま”は、忙しない。
「センだ。ツネさんに、話がある。」
「あっ、少し待って。・・・・・・いいよ。」
タケに言われ、ジッと待っていたセン。女の言う『すこし待って』は長い、と思っていたので、驚く。
「いいのか?」
「いいよ。」
お許しが出た。
「ツネさん、こんばんは。先、戻りました。長からの言伝です。」
セン。口数は少ないが、心根の優しい男である。
「・・・・・・セン。待ってるぞ!」
タケ、助け舟を出す。
「言うぞ、言います。『落ち着いたら迎えに行く』と。長、とっても喜んでたよ。」
明るく、ニッコリ笑って伝えた。
「そうですか。・・・・・・あの、村は。」
嬉しかったのだろう、ニッコリした。そして尋ねる。
「守り切るさ。それにな、魚川にいる風見は寄せ集め。早稲は、上手く逃げるだろう。だから蔦山が勝つ。オレはそう思う。」
毒を塗った矢が、あれだけあれば戦えるはず。食べ物、傷に効く草。ほかにもイロイロ渡した。
蔦山は強い。他との繋がりがないことを、弱いみたいに言うヤツがいるが、とんでもない。
他に頼らないってことは、それだけ強いってことだ。強くなけりゃ、守れない。
それに、だ。他と全く繋がりがないわけじゃない。それを風見は知らない。気づいていない。
「直ぐじゃない。でも必ず、迎えに来る。信じて、待とう。」
「はい。信じて、待ちます。」
センとタカは、遅い夕餉を食べた。それから、蔦山であったことを話す。
「まぁ、あの長なら守るだろう。風見も、倅が討たれれば引くはず。再び仕掛けるとすれば、春。なぁノリ、仕掛けると思うか?」
「いいや。人がいない、集められない。しばらくは、どこにも仕掛けられないだろう。」
シゲとノリの話を聞いて、目を輝かせるタカ。そろそろ、寝なさい。




