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祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
201/1634

6-35 信じて、待とう


日が落ちる頃、良山よいやまに着いた。良村よいむらに着いた時、辺りは真っ暗。良い子たちは、グッスリ。



マルも良い子だが、目をこすりながら起きていた。大蛇おろちからも、休むように言われた。それでも、伝えたかったのだ。『おかえり』と。


マルは話せない。だからギュッと抱きしめ、ニッコリする。


勢い余って、ガバッとなったが・・・・・・。




「二人とも、お腹が空いたろう。夕餉にしよう。」


「ありがとう、シゲ。あのな、蔦山のおさから、言伝があるんだ。ツネさん、起きてるかい?」


「少し前、が泣いたから、起きてると思うよ。」


「そうか。ちょっと行ってくる。」



母子ははこともに健やかだが念のため、コノとタケが代わり合って、産屋うぶやで寝起きしている。


アサは、子が生まれた日の昼、帰った。馬守だけではなく、他の村からも呼ばれる“かかさま”は、せわしない。



「センだ。ツネさんに、話がある。」


「あっ、少し待って。・・・・・・いいよ。」


タケに言われ、ジッと待っていたセン。女の言う『すこし待って』は長い、と思っていたので、驚く。


「いいのか?」


「いいよ。」


お許しが出た。




「ツネさん、こんばんは。さっき、戻りました。長からの言伝です。」


セン。口数は少ないが、心根こころねの優しい男である。


「・・・・・・セン。待ってるぞ!」


タケ、助け舟を出す。


「言うぞ、言います。『落ち着いたら迎えに行く』と。長、とっても喜んでたよ。」


明るく、ニッコリ笑って伝えた。


「そうですか。・・・・・・あの、村は。」


嬉しかったのだろう、ニッコリした。そして尋ねる。


「守り切るさ。それにな、魚川にいる風見かぜみは寄せ集め。早稲わさは、上手うまく逃げるだろう。だから蔦山が勝つ。オレはそう思う。」




毒を塗った矢が、あれだけあれば戦えるはず。食べ物、傷に効く草。ほかにもイロイロ渡した。


蔦山は強い。他との繋がりがないことを、弱いみたいに言うヤツがいるが、とんでもない。



他に頼らないってことは、それだけ強いってことだ。強くなけりゃ、守れない。


それに、だ。他と全く繋がりがないわけじゃない。それを風見は知らない。気づいていない。



ぐじゃない。でも必ず、迎えに来る。信じて、待とう。」


「はい。信じて、待ちます。」




センとタカは、遅い夕餉を食べた。それから、蔦山であったことを話す。



「まぁ、あの長なら守るだろう。風見も、せがれが討たれれば引くはず。再び仕掛けるとすれば、春。なぁノリ、仕掛けると思うか?」


「いいや。人がいない、集められない。しばらくは、どこにも仕掛けられないだろう。」



シゲとノリの話を聞いて、目を輝かせるタカ。そろそろ、寝なさい。


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