6-32 矢の雨
子狐の川から、深川に出て直ぐ。大蛇が良村へ、飛んで帰った。蛇って飛べるんだ・・・・・・って、飛べるかぁ! 見事な“ノリツッコミ”を披露したノリコ。
「ノリコ。どうした? 忙しそうだな。」
「クゥゥ?」 ソウカナ?
し、しまった。落ち着け、ノリコ。家に帰るまでが、お出掛けだ。深川に隠は住んでないけど、妖怪はいる。
まぁ、マルの御守りがあるから、悪さはしないだろう。でも、気を引き締めてっ、と。
「オイ、まだか。まだ、戻らないのか。」
「はい。あの、シシさん。」
「何だ。」
「オカシイと思いませんか?」
食べ物は何とかなるとして、矢は・・・・・・。矢尻と羽がなければ、作れない。そろそろ尽きるはず。
それに、いくら豊かな村でも海から遠く、離れている。塩がなければ、バテるはず。
「あの・・・・・・シシさん?」
「なんだ!」
「ですからぁぁぁ。」
ドサッ、バタッ。目ん玉から斜めに、矢が深く刺さっている。
「ま、さか。」
トスッ。
「・・・・・・フフフフフ。」
肩に刺さった矢を掴み、引き抜こうとした。ぬ、抜けない!
「に、逃げ」
ドサッ、バタッ。
ピュゥ、トスッ。バタッ。ピュゥ、トスッ。バタッ。ピュゥ、トスッ。バタッ。ピュゥ、トスッ。バタッ。
「何をしている! たたか」
な、何だ? 何があった? 手が、指が、震える。あれ、倒れた、のか。・・・・・・毒、か。
ピュゥ、トスッ。バタッ。ピュゥ、トスッ。バタッ。ピュゥ、トスッ。バタッ。ピュゥ、トスッ。バタッ。ピュゥ、トスッ。バタッ。ピュゥ、トスッ。バタッ。
「た、助け」
ドサッ、バタッ。
ピュゥ、トスッ。バタッ。ピュゥ、トスッ。バタッ。ピュゥ、トスッ。バタッ。ピュゥ、トスッ。バタッ。ピュゥ、トスッ。バタッ。ピュゥ、トスッ。バタッ。ピュゥ、トスッ。バタッ。ピュゥ、トスッ。バタッ。
魚川にいた風見の兵が全て、動かなくなった。山に入っていた者も、残らず。
良村から貰った矢には、毒が塗ってあった。干し貝入りの粥を作っている間に、残っていた矢に、貰った毒を塗る。塗って乾かし、塗って乾かし。
狩り人たちは腹ごしらえし、川を望む地へ急ぐ。貰った矢を番え、放つ。狙うは、風見のシシ。蔦山の長が仕留めた。それから、矢の雨が降った。
残りの村人たち。火を消してから、山狩りへ。矢尻に塗った毒が乾いて直ぐ、動いた。
蔦山の圧勝。風見の兵は全滅。風見の長に報告したのは、早稲。ノリたちの話をしていた、あの二人だ。