6-31 大蛇とノリコ
聞いても良いか?
「申せ。」
悪い四人、どうなった?
「魚の餌になった。いや、なる。」
そうか。・・・・・・その魚、どうなるんだ?
「はて。どう、とは?」
アイツら、悪い人だ。黒いモヤモヤが出ていた。そんなの食ったら、モヤモヤに。その、何だ。
「ハッツハッ、案ずるな。川底に沈めば、祓われる。」
なら良い。あの川の魚は大きくて、美味しい。釣りの穴場なんだ。
「そうか。」
そうさ!
「ノリコよ。」
なんだい?
「恐ろしくは、ないのか。」
川も湖も海も、恐ろしい。いきなり牙を剥く。
「そなた。すべて、見えるのであろう。」
見えるぞ。それが、どうした。
「我を、畏れぬのか。」
あぁ。他のと比べれば、違うな。偉いんだろうが、隠のコトなんて、わからん。オレにとっては、ノリさんが最も偉い。
長だから、村じゃシゲさんが偉い。でも、さ。オレにとっちゃ、シゲさんは、次。
「・・・・・・幸せよのぉ。」
幸せさ。羨ましいか?
「フフッ、ハハハハハ。」
大蛇、マルが好きなんだろう?
「好ましく思って居る。」
マルも、そうだと思うぞ。
「そうか。」
そうさ!
「ノリコよ。」
なんだい。
「子狐の川だがな。」
いるんだろう? ワサワサしたのが。
「知って居ったか。」
狐の泉に、黒い狐がいた。尾が多くて、ワサワサしてたから、覚えている。隠かい?
「いいや、妖怪だ。九尾の黒狐。」
・・・・・・生まれて直ぐ、死んだか。
「なぜ、そう思う。」
シロとクロさ。同じ親から生まれたんだ。どっちも、山吹色。他のも、山吹色。あいつらだけ、毛の色が違ってた。何でかね、人は見た目で虐める。
オレは小さすぎて、見捨てられた。聞いてくれよ! いきなり首の皮を抓まれて、森の中へポイッ、だぜ。ピュゥゥン、ベチャ。仔だぜ? 仔犬をさ、捨てるか?
「・・・・・・鳥のエサにする。」
それも嫌だな。・・・・・・オレさ。ノリさんに拾われるまで、烏に突かれてたんだ。あぁ、死ぬなって。
「良い人に救われたな、ノリコ。」
そうなんだ! だからオレ、ノリさんのために生きるって、決めたんだよ。
「そうか。」
でさ。シロもクロも、オレみたいに虐められてた。それを、タケさんとムロさんが引き取った。
「・・・・・・そうか。」
だから思ったんだよ。黒狐も、同じかなって。
「育つまで、親元にいた。狩った獲物を奪われ、弱ってな。群がる烏に襲われ、死んだ。悔しかったのであろう。今わに流した涙が、泉になったのだ。」
そうか。コッコ、偉いな。次、会ったら、褒めてやろう!
「コッコか。ハハハハハ!」
ん?
「きっと、喜ぶ。」
近いうちに酒を持って、会いに行くよ、友よ。フフッ。