6-28 甘いな
風見のヤツらの口ぶり、身のこなし、顔つき。どれも、劣っていた。
戦ってのは、長引けば長引くほど、終わらせるのが難しい。とはいえ、魚川を押さえているのは風見。蔦山の守りが固いとはいえ、厳しい。
いや、待てよ。アイツら、知ってたな。・・・・・・オカシイ。
ノリにカズ、コタ。三人とも強いが、シゲと共に、後ろに控えていた。いつか早稲を出て、新しい村を作るために。それを知っているのは、死んだ。
早稲のヤツらは知らない。言うワケがない。新しい村を作るのは、みんなの夢。生きる糧だった。
それでも知ってた。ということは、カツ! アイツ、言いやがったな。
オレが蔦山の長と繋がってることは、知られていないようだ。なら、まだイケる。
鳥の谷から蔦山まで。いくつか沢を伝って、来ることが出来る。どこかの村から助けが来ても、おかしくない。それに、降るんだ。釜戸山の灰が。
釜戸社との繋がりがあるってことを、風見は知らないか、気づいていない。
知っているか、気づいていれば、こんなに長引かない。もっと多く突っ込むはずだ。良村との繋がりを風見に知られる前に、終わらせる。それしか、ない。
「長、聞きたいことがある。」
「何だい?」
「この戦、勝てそうか。」
「・・・・・・風見の倅に、シシってのがいる。あの長には子が多い。その一人だ。狩頭に育てられたらしい。」
「強いんだな、シシってのは。」
「戦い慣れている。ココが強い。」
蔦山の長がコンコンと、顳顬を指先で叩いた。
「そんなに回るのか。」
「回る。討っても討っても、風見の兵は減らない。次から次へと、送られてくる。」
「矢は。」
「助かったよ。少なくなって、困っていたんだ。」
「そうか。で、他からは。」
「釜戸山から、幾度か。それと、川田のタロ。狩り人に、声を掛けてくれてな。」
魚川を押さえられて直ぐ、戦い方を変えた。山から川へ向けて、矢を放つ。広いとはいえ、谷川だ。狙いやすい。
蔦山の狩り人は、弓の扱いに長けている。厚い皮に覆われた熊なら、難しい。しかし、人だ。毒を塗った矢を受けて、戦い続けられるほど強くない。
風の流れを読んで、一人づつ。時はかかるが、削ぐことが出来る。
「どう出ると思う。」
「風見の兵は弱い。早稲は戦えるようだが、魚川からは入ろうとしない。脇の山から入っている。」
蔦山に入っても、村を攻めようとしない。戦う気がないか、早稲の長から言われたか。どちらにせよ、見つけたら直ぐ、仕留めている。
寄せ集めよりは、食べているようだ。狐の泉あたりで、狩っているんだろう。
風見の兵は飢えている。早稲は、分ける気がない。このまま持ちこたえれば、風見は兵を引くはず。
「甘いな。」