6-26 サプライズ
「オイ、どうする?」
「放っておけ。」
まっ、まだ、いたぁぁぁぁぁ! ノリコさん、凄いですね。村に着いたら、干し肉を差し上げます。
「いると、思うか。」
「あぁ。」
「けど、ここ急だし、沢からさ。」
「離れてるな。」
「だったら。」
「ノリ。」
「・・・・・・あの、犬好きか?」
「カズ、コタ。」
「アイツら、弱いだろう。」
「力はな。けど強い。慣れてんだ、戦に。」
・・・・・・そうなんだ。いつもニコニコしてるのに、慣れてるんだ。シゲさんは、見るからに強そう。センさんも、ね。
「もしも、だ。あの三人が、蔦山の長と繋がってたら。」
「たら、何だよ。」
「負ける。」
「えっ。」
「行くぞ。」
・・・・・・。ノリコさん、まだですか? ハッ、まだ誰か来るんですね。・・・・・・寝てる?
確かに、目を閉じています。でも、寝てません。起きてました!
しばらくして、スクッと立ち上がり、クイッとしましたから。寝てたら、ウゥゥゥゥンと伸びるでしょう?
「さぁ、行くぞ。背負ってくれ。」
促されるまま背負子を背負い、再び歩き出す。
あの二人のことセンさん、知ってるのかな? 聞いてみたいけど今は、よそう。???
「クゥ。」 マテ。
どっか行けよ。・・・・・・ヨシ、行った。
「クゥ、クッ。」 サア、イコウ。
もう直ぐだよ! ついてきてね。トコトコ。
深い霧の中、ズンズン進む。ジグザクに山を登り、バテる前に休む。急なのに、歩けるもんだなぁ。
「ワン。」 ツイタ。
ノリコが吠えた。ギョッと振り返る、蔦山の村人たち。そして・・・・・・。
「と、父さん!」
父の胸に飛び込んだ。
「タカ!なぜ、ここに。」
ギュッと抱きしめたまま、問いかける。
「やぁ、長。」
「セン。・・・・・・ま、まさか。」
「生まれた。男だ。ツネさんも健やかだ。乳の出が良いって、馬守のアサさんが言ってた。」
「アサって、“かかさま”か!」
「良かったな。生まれた子、育つってさ。ノリのカンは当たるんだ。だから育つぞ。」
「そうか。そうか、育つか。」
「あぁ、そうだ。いろいろ持ってきた。」
『ヨッコイショ』とは言わなかったが、背負子を下ろす。タカの背負子は、父が下ろしてくれた。
「重いな。」
「エヘヘ。オレ、強くなったんだ。」
「そうか。」
父に撫でられ、タカ。ニッコニコ。