6-25 ノリコ、大活躍
タカに持たせた分を受け取り、蔦山を目指す。何も言わなくても、スタスタ歩くノリコ。時々振り返り、待ってくれる。
沢沿いを行くのかと思ったが、違った。獣道とも、違う。狭くはないが、広くもない、そういう所を選んでいるようだ。
風見も早稲も、戦好きだ。早稲の生き残りは、そんなに強くないだろう。若いのが残ったらしい。
若いのも鍛えれば、強くなる。生き残りの中に、ヤツがいた。ヒト。見た目は、ナナさん似。頭ん中は、父親ソックリ。アレは、いけない。
ヌエはカツと、罰を受けている。生きているのか、死にそうなのか。まぁ、シブトイからな。
子を攫うように仕向けたのは、ヒトだろう。蔦山に仕掛けることも、考えていたはずだ。
早稲の子は、弱い。大きく育っても、幼い。だから、鍛えるために風見についた。蔦山に来たのは、そういうヤツらだ。これが、初めての戦だろう。
慣れていない分、手がかかる。恐れずことなく、突っ込んでくる。危ない攻め方を、強いられているはずだ。
風見のやり口は汚い。慣れてないのを、顎で使う。認められたくて、多く討つことだけ考えるようになる。そんなのに出くわせば・・・・・・。
「クヮン。」 カガンデ。
ノリコが伏せた。
「タカ、屈め。身を潜めろ。」
持っていた荷を置き、タカの背から背負子を外した。音を立てるかもしれない。
小さくなれば、隠れられる。音を立てれば、見つかる。ノリコが伏せた、ということは、近くにいる。こちらへ向かっているのかもしれない。
「タカ、腹ばいになれ。離れるのを待つ。」
屈むだけじゃ、いけないの?
「タカ、急げ!」
「は、はい。」
ノリコが伏せたまま、動かない。センさんも、伏せた。何も聞こえないけど、いるのかな?
「こんな裏山に、いるのか?」
「知るかよ! けどさ、魚川に来ないんだ。裏から来るかもしれないだろう。」
「そうか?」
「オレは認められてぇんだ。テメエと違ってな。」
「オレだって、認められてぇよ。」
「だったら、黙って探せ!」
パキッ。
「オイ、今。」
「あぁ。」
・・・・・・えぇぇぇぇぇぇ! オレ、何もしてません。動いてません。そうだよな、ノリコ! って、あれ?
「何だ、鹿か。」
「狩ろうぜ。肉だ、肉。しかも、カノシシ!」
「オマエ、狩れるのかよ。」
ピュッ、ポタッ。タッタッタ。
「外してんじゃねぇよ!」
「クッソォォォォォ、逃げられた。」
「沢の辺り、探そうぜ。」
「そうだな。」
フゥ、助かった。・・・・・・あれ?