6-21 生まれた!
オギャァァァ。オギャァァ! オギャァァァ!!
「う、生まれた。」
「良かった。」
お産は命がけ。産んで直ぐ、命を落とすこともある。生まれた子だって、育つとは限らない。何はともあれ、生まれた。産屋の外のウロウロ組。みんな、ホッとする。
しばらくして、タケが出て来た。
「生まれた。男の子!」
大きな声で! ニッコニコ。
「そうか。で、ツネさんは。」
「親子とも健やかだよ。コノ、もう良いかい?」
「良いわよ。」
ゾロゾロとウロウロ組。大人しく、産屋へ。
「真っ赤だ。」
「ちいさぁぁぁい。」
「動いた!」
初めて見る、生まれたての嬰児。
「真っ赤だから、赤ちゃんって呼ぶんだよ。」
「どんどん、大きくなるんだ。」
「そりゃ、動くよ。」
お兄さん、お姉さん。ニコニコしながら、やさしく教える。
「おめでとう、ツネさん。」
「おめでとう。良かったね。」
「いっぱい、いっぱい、ギュッてしてね。」
「ありがとう。みんな、ありがとう。」
皆に祝われ、微笑むツネ。嬰児を抱きしめ、幸せそう。
「この児、大きく育つ。ウン、育つ。」
「そうか、育つか。良かったな、ツネさん。ノリのカンは、当たるんだ。育つぞ、良かったなって、オネムか。」
センの『オネムか』で、幾人かズッ転けた。
「蔦山へ行ってくる。長に知らせにな。」
「オレが行くよ。直ぐにドウコウってんじゃないが、シゲ。長は残ってくれ。」
「・・・・・・分かった。」
「なぁ、シゲ。矢をな。」
「持ってけ。弓も幾張りか。」
「セン。ノリコを連れて行け。それとな、子狐の川から行け。魚川は、風見が張ってる。」
「子狐の川って、深川のか。日吉の近くの。」
「そうだ。蔦山の近くまで、舟で行ける。上がれ、ノリコが教えてくれる。」
「ワン。」 マカセテ。 キラキラキラァァ。
クイクイと、衣を引っ張られた。
「ん? 何だい、マル。くれるのかい?」
ブンブンと首を横に振る。
「貸してくれるってさ。」
コクンと頷いた。
「蛇の抜け殻は、御守りになる。行って、戻ってこい。ちゃあんと、マルに返すんだ。なぁ、マル。」
ノリに撫でられ、ニッコリ。
「戻ってくるよ。」
センがマルの頬を優しく撫で、言った。マルの足元で、マルコが尾を振る。
近くまで舟で行けるならと、弓と矢の他に食べ物、傷に効く草、矢尻に塗る毒、乾かした瓢箪。一人では運べないから、蔦山の子、タカも行くことに。