6-19 消えてしまう前に
朝餉と夕餉は、みんなで食べる。とっても賑やか。いろんな話をしながら、楽しく、美味しく、残さず頂く。
「えっと、犲って?」
思わず、シンが問いかけた。
「いるだろう、後ろに。」
・・・・・・え? 落ち着け、オレ。ノリは、ただの犬好きじゃない。大の、犬好きだ。
「神?」
シゲ?
「いるんだろうけど、信じない。」
タケが言い切った。
「オレも。」
ムロ、一言で片付ける。
「いると思うよ、神様。」
カズ、何があった!
「なんで?」
確か、信じてたよな、セン。
「いや、だってさ。この山、実のなる木が多いんだ。それに、整ってた。誰か、隠れて暮らしてるのかと。探しても探しても、いない。ってことは、さ。神様が守ってるのかなぁって。」
「そっか。信じるわ、私。」
コノ。ニッコリ。
「オレも。」
コタも、ニッコリ。
「そういうことなら、信じるよ。ムロは?」
「信じる。」
タケもムロも、真っ直ぐだなぁ。
「良ぉ、ございましたね。大実神。」
使わしめ、オミ。シンの後ろにいた、犲です。
「そうだな。」
山から人がいなくなって、早幾年。やっと住み着いたのが、良村の人たち。
皆、多く背負っている。戦慣れしていたが、争いは好まない。
「御姿も。」
人が居なくなって、少しづつ小さく・・・・・・。
「見えるだけでは。」
「あの童女。マルならば。」
祝女の孫ですから。
「話せぬようだが。」
「・・・・・・神。」
「そのような力は、ない。」
ズバン。
「どうした、マル。」
あの小さい人。神様?
「大実神。使わしめは犲で、名をオミ。」
使わしめと隠は、違うの?
「神に仕える隠や妖怪が、使わしめ。隠は祀られることで、神となる。とても強い力を持ち、中には神に仕える隠も。妖怪がなれるのは、使わしめ。神には、なれぬ。弱いが、人を驚かせる力を持つ。隠も妖怪も、見る力が無い限り、人には見えぬ。」
他には?
「隠には良いの、悪いの、その間の三つ。妖怪には、良いの悪いのの、二つ。」
大蛇、牙滝神よね。神様を辞めたの?
「継ぐ子に任せた。ずっと、マルの側に居るぞ。」
・・・・・・神様を辞めたら、隠になるの?
「隠は、何があっても隠。神は闇堕ちすると、妖怪になる。マルよ、何も案ずるな。悪いのは全て、この大蛇が倒す!」
まず、話し合おうね。
「そうだな。」
ワイワイ、モグモグ。ニコニコ、ゴックン。幸せそうに微笑むマルを見て、大蛇は思った。そのうちポンと、言の葉を話すかもしれないと。