6-18 かめっこ
大蛇と話していると、大きな何かが近づいてくる。そんな気がして・・・・・・?
「どうした、マル。コイツも賢いぞ。この山にはな、犬が多いんだ。他にも、いるようだが。オレには見えない。」
じゃぁ、大蛇も?
「そのようだな。この男、大の犬好き。犬にも好かれて居る。だから、だろう。犬は見える。他は見えぬが、分かる。我だけでない。狐、兎、他にも、いろいろ。」
そうなんだ。みんな、隠なの?
「そうだ。姿が見えない何か、それが隠。」
見えるよ。
「マルは祝女の孫だ。その力が目覚めた。少しづつ、強くなるだろう。」
祝の力って、いろいろあるよ。私にあるのは、どんな力なの?
「清めと、守りの力だな。」
「マル。どうした、疲れたか。少し休むか。」
コクンと頷き、ニッコリ。
「キュゥゥゥゥ。」 ヨカッタァァァァァァ。
コハル。もう、クッタクタ。
「ワ、ワン。」 ニヒキトモ、ミズヲノメ。
「キャン。」 ハイ。
マルコは、まだまだイケます! キラキラァ。マルに撫でてもらい、尾をブンブン。幸せいっぱい。
対して、コハル。顔をベロンとされ、慰められる。厳しくも優しいアニキ。それが、ノリコ。
村に戻って、みんなで朝餉を作る。ワイワイ、ガヤガヤ。楽しくて、嬉しくて、ニッコニコ。
釜戸山の出で湯に浸かり、北山にいた時に比べれば、癒えた。とはいえ、まだ痛む。あちこち、痣だらけ。黒いのは青く、青いのは赤く、赤いのは薄くなって、黄色く。
はじめは、匙も持てなかった。今は持てるけど、捻ると痛い。だから、ゆっくり、ゆっくり。
良村の人は、みぃんな。とっても、とっても優しい。何をするのも、ゆっくりで。うまく出来ないのに、誰も悪く言わない。
蔦山の子が、『かめっこ』って、言った。そしたら、ソラがね。言ったの。『亀は強い。身を守る術と、技を持ってる。だから、マルは強い。』
私、強くなりたい。逃げるのは、嫌。もう逃げない。だって、一人じゃないもん。それに私、マルコの“お母さん”だもん。
ノリさんがいる。シゲさんがいる。カズさん、コタさん、コノさん、シンさん。タケさん、ムロさん、センさん。
「それは、心強い。」
大蛇も、そう思う?
「あぁ、思う。」
そっか。ウフフ。・・・・・・ねぇ、大蛇。
「なんだ。」
牙の滝にね。飛び込んだ時、助けてくれた?
「助けた。死なせたくなかった。」
ありがとう。私、生きてて良かった。
「ウム。命尽きるまで、生きるのだ。」
ハイ。