6-17 見えちゃった
スヤスヤ、スヤスヤ。お腹いっぱい食べて、暖かくして、グッスリ。幸せそう。
・・・・・・うぅん、あれ? そうだ、ここ、良村だ。
「キュゥン?」 ドウシタノ?
マル、まだ眠そう。ゴシゴシして、キョロキョロして。ほっぺ、ペロペロしてあげるね。
・・・・・・っ? マルコったら、くすぐったい。
「マル、おはよう。」
あっ、ノリさん。おはようございます! ニッコリ。
「おいで。」
マルコを抱き上げ、外へ。うぅぅ、冷える。
「顔を洗って、朝の山歩きだ。」
わぁ、山歩き? 楽しそう。頷いて、ニッコリ。
「仔犬の時から、しっかり歩かせる。そうして育てると、強い犬になる。小さいからって、いつも抱えてたら、歩けない犬になる。」
そうなんだ。ノリコ、いっぱい歩いたんだね。
「ハッハッハッ、キュゥゥン。」 ママッマッテヨォ、ハヤイィィィ。
張り切って歩くマルコ。コハルは、クタクタ。
釜戸山で生まれ、厳しく躾けられたマルコ。余程の高さでない限り、ピョンと飛び越え、トコトコ歩く。
馬守で生まれ、ヌクヌク育ったコハル。平たい地で、ノビノビ楽しく、駆け回っていた。デコボコなんて、歩くだけでフラフラ。
「ワン。」 イソゲ。
そ、そんなぁ。ノリコさん、コハルは女の子です。少し、休みましょうよぉぉぉぉぉ。
「キャン。キャ、キャ、キャン。」 ナニイッテル。オトコモ、オンナモ、ナイ。
それに、釜戸山ではね。山歩きじゃなくて、山走りだったゾ!
「キュウ、キャン。」 ニヒキトモ、ヒドイ。
って、置いてかないでぇぇぇ。
・・・・・・? ここ、何だろう。
「キュゥン?」 ナンダロウネ?
コテンと首を傾げるマル。真似るマルコ。
「ウヮン。ワン。」 イルゾ。イイノガ。
ノリコ。尾を、振り振り。
小さな泉。そばに、石を三つ重ねた何か。その上に・・・・・・。ジイィィっ。アッ、見えた。小さい、人?
「見えたか。」
振り返ると、そこには大きな蛇が! わぁぁぁぁ、ノリさぁぁぁぁん。ガバッと抱きついた。
「ん? どうした、マル。」
しがみついたまま、離れない。
「マル。もしかして、見えるのか?」
キョトン。ノリさんにも見えるの?
「このイヌは、隠だ。ずっと昔、ここに住んでいた誰かが、飼ってたんだろう。悪さしない、賢い犬だ。怖くない。」
そうなんだ。・・・・・・犬? い、いたぁぁぁぁ。
「コレ、マル。犬ではなく、蛇。我を見よ。」
・・・・・・あれ。私、蛇と話してる?
「そうだ。頭の中で、直にな。」
蛇さん。だあれ?
「名は、ない。マル、好きに呼べ。」
じゃぁ、大蛇。
「そのままだな。」
ノリと良い勝負かも。