表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
祝 ~hafuri~  作者: 醍醐潔
良山編
180/1570

6-14 救われた、二つの命


何を口にしても、味がしなかったのに。どうしてだろう。とても美味しい。



幸せそうに、少しづつかゆを食べるマル。そんなマルをニコニコしながら、優しく見守るノリ。側でノンビリ、寝そべるノリコ。


心もお腹も満たされて、マルはウトウト夢の中。




裁きが終わるまで、守り人の村で預かる。そう決まっている。なのに良村よいむらに託すと、守り長は決めた。マルの事、話し合いで済む話ではない。それを、いくら長でも。釜戸社かまどのやしろの、誰もが思った。


とはいえ、このままでは死んでしまう。粥をうすめても食べない、甘い実も食べない。水も、飲まない。


マルが眠っている間に、抱きしめている竹筒を抜き取り、水を入れ、戻す。そこまでして、やっと少しづつ、水を飲むようになった。


水を飲んでいれば、ぐに死ぬことはない。とはいえ、ドロンとした目で、ボンヤリ遠くを・・・・・・。



はじめは犬が近づくたびのぞき込んでいた。そのうち、チラリと見て、小さく溜息。ノロノロと木の陰に入る。ズゥゥンと暗い顔をして、グッタリ。腕がダランと下がり、動かない。


放っておけず、息をしているかどうか、確かめる。そんなことが続けば、慣れてしまう。犬が吠えないなら、生きているだろうと。




「ウゥゥ、ワン。」 ヤスムナ、シンイリ。


「キャィン。」 アッツ。



ノリコがムクリと立ち上がり、外へ。


「ワン。」 ヤメロ。


「ワワン。」 クチダシスルナ。


「ウゥゥ。」 コダゾ。


仔犬に近づいたノリコ。噛み傷を舐め、ヒョイとくわえて戻った。


「ワン、ワワン。」 ノリサン、コノコモイイカナ。


家の入口で仔犬を下ろし、キュルンと見つめるノリコ。




マルが起きた。仔犬に気づくとトタトタ近づき、抱き上げる。傷だらけの、小さいコ。助かる、よね。


「ノリコも小さかった。でも今じゃ、この通り。育つさ、きっと。」


仔犬を包むように抱きしめ、ニッコリ。そして、ジィィィィィィ。


「飼うのか?」


キラキラキラ。


「マル。生き物を飼うってことはな、親になるってことだ。人と暮らせるように育てて、守る。水を飲ませ、エサを与える。褒めて、叱って。撫でるだけじゃ、いけない。歩かせ、洗い、休ませる。この犬の命を、マルが握るんだ。」


ノリの目を、真っ直ぐ見て、コクンと頷く。


「そうか。なぁ、シゲ。」


「犬飼いが、譲ってくれたらな。」



小さすぎて、育たないかもしれない。それでも良いならと、あっさり譲ってもらった。





「マル。今から、この犬の母さんだ。しっかり育てるんだぞ。」


力強く頷き、ニッコリ。


「名は、マルコ。どうだい?」


「ま、待て。マルの犬だ。マルに・・・・・・?」


マル、ニッコニコ。


「良いのか、マルコで。」


コクリ。



仔犬の名、マルコに決まりました。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ