6-14 救われた、二つの命
何を口にしても、味がしなかったのに。どうしてだろう。とても美味しい。
幸せそうに、少しづつ粥を食べるマル。そんなマルをニコニコしながら、優しく見守るノリ。側でノンビリ、寝そべるノリコ。
心もお腹も満たされて、マルはウトウト夢の中。
裁きが終わるまで、守り人の村で預かる。そう決まっている。なのに良村に託すと、守り長は決めた。マルの事、話し合いで済む話ではない。それを、いくら長でも。釜戸社の、誰もが思った。
とはいえ、このままでは死んでしまう。粥をうすめても食べない、甘い実も食べない。水も、飲まない。
マルが眠っている間に、抱きしめている竹筒を抜き取り、水を入れ、戻す。そこまでして、やっと少しづつ、水を飲むようになった。
水を飲んでいれば、直ぐに死ぬことはない。とはいえ、ドロンとした目で、ボンヤリ遠くを・・・・・・。
はじめは犬が近づく度、覗き込んでいた。そのうち、チラリと見て、小さく溜息。ノロノロと木の陰に入る。ズゥゥンと暗い顔をして、グッタリ。腕がダランと下がり、動かない。
放っておけず、息をしているかどうか、確かめる。そんなことが続けば、慣れてしまう。犬が吠えないなら、生きているだろうと。
「ウゥゥ、ワン。」 ヤスムナ、シンイリ。
「キャィン。」 アッツ。
ノリコがムクリと立ち上がり、外へ。
「ワン。」 ヤメロ。
「ワワン。」 クチダシスルナ。
「ウゥゥ。」 コダゾ。
仔犬に近づいたノリコ。噛み傷を舐め、ヒョイと咥えて戻った。
「ワン、ワワン。」 ノリサン、コノコモイイカナ。
家の入口で仔犬を下ろし、キュルンと見つめるノリコ。
マルが起きた。仔犬に気づくとトタトタ近づき、抱き上げる。傷だらけの、小さいコ。助かる、よね。
「ノリコも小さかった。でも今じゃ、この通り。育つさ、きっと。」
仔犬を包むように抱きしめ、ニッコリ。そして、ジィィィィィィ。
「飼うのか?」
キラキラキラ。
「マル。生き物を飼うってことはな、親になるってことだ。人と暮らせるように育てて、守る。水を飲ませ、エサを与える。褒めて、叱って。撫でるだけじゃ、いけない。歩かせ、洗い、休ませる。この犬の命を、マルが握るんだ。」
ノリの目を、真っ直ぐ見て、コクンと頷く。
「そうか。なぁ、シゲ。」
「犬飼いが、譲ってくれたらな。」
小さすぎて、育たないかもしれない。それでも良いならと、あっさり譲ってもらった。
「マル。今から、この犬の母さんだ。しっかり育てるんだぞ。」
力強く頷き、ニッコリ。
「名は、マルコ。どうだい?」
「ま、待て。マルの犬だ。マルに・・・・・・?」
マル、ニッコニコ。
「良いのか、マルコで。」
コクリ。
仔犬の名、マルコに決まりました。