6-9 そんなに見つめないで
「マル。ノリコの目を見ろ。」
ジィィィィィィ・・・・・・。
「クゥン?」 ドウ? キラキラキラァァ。
なんだか、照れるなぁ。
「マル。チビの目を見ろ。」
ジィィィィィィ・・・・・・。
「クゥ。」 エッ。 キラキラキラァァ。
て、照れる。
「どうだ? 輝いてるだろう。」
コクンと頷いた。
「こういう目をした犬。飼っているのは、良い人だ。」
パアァと明るい顔になって、コクンと頷いた。
「良い人か、悪い人かは、犬が教えてくれる。分かったかい?」
コクッと頷き、ニッコリ笑った。
「チビの父さん、そういうことだ。」
・・・・・・え?
「そうだ。犬はな、干し肉が好きなんだ。水と、少ないけど、団子も。ほら、持って行け。」
ペコリと礼をして、ニッコリ。
シバは戸惑う。良く分らないが、釜戸山へ行くことを、受け入れたんだろう。あんなに怯えていたのに、笑っている。このまま良村に託せるなら、託したい。
一人では、決められないのだろう。長の許しを得るために、村に戻る。ノリじゃなくても、そうするさ。人の子だ、仔犬を譲り受けるのとは違う。
「そろそろ、行こうか。」
コクンと頷いた。
「マル。また会おうな。」
コクンを頷き、ニッコリ。
「ワン。」 マタネ。
ニッコリ。
ノリから貰った袋を腰に、竹で作られた筒を、斜め掛けに。マルはチビと、楽しそうに歩く。重かった足取りが、軽くなっていた。
大川から釜戸山へ。釣り長から、許しを得た。マルはギュッと口を閉じたまま、キョロキョロしている。
「マルを、お願いします。」
ギョッとして、チビを抱きしめる。
「マル?」
ブンブンと首を振り、嫌がった。
「クゥゥン、ワン。」 コワクナイヨ、ホラ。
心細いんだろうな。でも、ね。釜戸山の人は、良い人だよ。とっても気持ちが良い、出で湯。ゴハンも美味しい。きっと気に入るよ。
「マル。私たちは、霧雲山に・・・・・・。」
目を潤ませ、チビを離そうとしない。
「シバ。守り人の村まで、行ってくれないか。」
「はい。」
釣り人の村で泊まった。食が細いのか、あまり食べない。ノリから貰った竹筒を抱きしめ、眠っている。気になるのか、チビが側から離れない。
朝餉を食べてから、馬を借りて、守り人の村へ。