6-5 また早稲か
釜戸山の、源の泉に着いた。山に入る許しを得るため、シンが守り人の村へ。シゲとタケは、罪人を黙らせながら、休んでいた。
大人と子、六人づつ。合わせて十二。熊実に乗りいれた、良村の舟は二隻。迚も乗り切らない。
話し合いの末、シゲとシンが罪人を一人づつ乗せ、先に行くことに。もちろん、犬つき。
馬守の村から舟を借り、タケとイクが、助けた子を連れて来る。
「また、早稲。しかも子を、六人。」
「はい。良村のシンが見つけ、長が捕らえたと。」
増えていた。子が攫われた、という訴えが。攫われるのは、子ばかり。働き手を補うため、攫ったのだろう。
早稲のカツを、鳥の谷で見た。早稲の男が、熊実にいた。そういう話を聞くようになったのは、冬の終わり。
『カツはあの、タツみたいなヤツだ』狩り人は皆、言う。早稲に残った、ということは、そういうことなのだろう。
考えても、考えても、わからない。早稲は低い地にある、釜戸山の灰が届かない、遠い村。
地が震えたのは、高い地だけ。そう、ポコさまが。
「なぜ、子を攫った。」
守り長、カイが問う。
「ハッ。玉置と三鶴に奪われたから。奪い返そうとしたのに、戦で死んだんだとよ。それなら、子を攫うしかないだろう。違うか?」
前の裁きでは、シゲたちが証を見つけて、持ってきてくれた。言い逃れ出来ない証、見た人、聞いた人。すべて揃っていた。
この度は、攫って運ぶのを見つけ、捕らえてくれた。子らも、はっきり覚えている。見た人、聞いた人、証もある。でも、少ない。
獄に繋いですぐ、早稲を調べた。手助けの申し出があり、良村のノリとムロが加わった。飼い犬のノリコとクロも。
思っていたより、酷かった。釜戸山の、灰が降る地の人は、助けられた。他の人たちは・・・・・・。
「攫うな、奪うな、学べ。」
「ハァ? 何を。」
「早稲の長、倅ジン、村人タツ。裁きと、その後。罪を犯せば、罰を受ける。」
「だから何だ。オレも殺すか?」
「カツ。セイの胎に、子が。夏に生まれると聞く。父として、恥ずかしくない生き方を。」
「子ねぇ、オレの子だろうな。で、何だ?」
何だって。調べによれば、力づくで。村に着いて直ぐ。それが、早稲なんだろうけど・・・・・・。
「仕置を言い渡す。早稲のヌエ、カツ。仕置場にて、鞭たたき。痣だらけにしてから藁に、足を折って座らせる。釜戸山から噴き出した、大きな石を腿の上に、積めるだけ積む。夜は縛ったまま、火口へ吊るす。これ、六月。」
釜戸社で、裁けるだけで、二十五人。死人が出ていないとはいえ、仕置としては軽い。もし再び、罪を犯せば。その時は!
「仕置場へ。」