6-4 暴れなければ、噛まないよ
「ワン、ワワン。」 アッ、モドッテキタ。
「良い子にしてたかい?」
「ワン。」 ハイ。
タケに撫でられ、尾を振るシロ。
「多いな、六人か。」
「あぁ。どこかに・・・・・・。」
「ヌエか。」
「子とはいえ、六人を運ぶとなると。」
「シゲ、シン。ヌエって、あの?」
「そう。早稲の、何考えてるのか、わからないヤツ。」
「来たんだ、熊実に。カツは兎も角、ヌエも?」
「見た人がいる。ヌエって、呼んでたって。」
シンが言うなら、そうだろう。それにしても、嫌なのが来たなぁ。
「ングング、ウグッ。」
「逃げられない。諦めろ、カツ。」
「ンガンガッ、ガァァァ。」
騒ぐたび、噛みつくシロ。良村の犬たちは皆、嫌っている。タツもカツも、犬を虐げて楽しんでいた。
「で、君たち。どこの子か、教えてくれるかな?」
「・・・・・・オレと妹は北山。」
「オレと弟、東山。」
「オレ、飯田。」
キュルルゥゥゥ。誰かの腹の虫が鳴く。
「食べる?」
タケが団子を差し出した。あっと言う間に、ペロリ。
「ウゥゥ。」 キタナ。
シゲコが低く呻った。そして、タッと走った。シロも後に続く。
「ワンワン、ウゥゥ。」 ニガサナイゾ、オマエ。
「ワン、ワワン、ワン。」 コラ、ニゲルナ、オイ。
「シッシッ。あっち行け。アッ。」
タケが投げる。猟で使う縄が、ヌエの足を捕らえた。二匹に飛び掛かられ、勢いよく倒れた。逃げる間もなく、あっさり締め上げられる。
「他に、誰かいるか。」
「フン、答えるわけっ、グァァァァ。」
シロ。思いっきり、噛みつく。
「ウゥゥゥゥゥゥ。」 スナオニコタエロ。
シゲコ。噛みつく気、マンマンである。
「他には。」
静かに問う、シン。
「い、いない。オレとカツ、二人だ。」
噛まれたくないのか、シゲコをチラ見。
「舟はどこだ。どこに隠した。」
「み、三鶴の、外れ。」
「あったよ、二隻。底なしの湖と、獣山の間に。」
馬に乗り、颯爽と登場! 馬守の狩頭、イク。ノリにコハルを譲った、馬守の村きっての、犬好きである。
「嘘だと思った。」
タケ、大当たり。
「誰と来た。誰が残っている。」
シゲ、シン、タケ、イク。シゲコ、シロ。四人と犬二匹、馬一頭。馬はムシャムシャ、食事中。
「オレとカツ、二人だけだ。他には、いない。信じてくれっ、ギャァァァァ。」
ガブッと、シゲコ。
「グガァァァァァ。」
ガブッとシロ。
「カツ、ヌエ。諦めろ、逃げられない。」