6-1 お土産だよ
新章スタート!
早稲を飛び出し、新しい村を作った。皆、心にも体にも、深い傷を負っている。歪んでしまっている。大人は、手遅れだ。子らは、間に合う。間に合わせる。
生きられなかった人の分まで、幸せに。スクスク真っ直ぐ育って、強く優しい大人に。きっと、きっと。
ウンザリするような事が、次から次へ。それでも決して諦めず、子らの幸せを願う。子は宝だ、何があっても守り抜く!
良山編、はじまります。
「ワン、ワン。」 シゲサン、オカエリ。
「ただいま、シゲコ。」
撫でられ、ウットリ。
「シエさん、おかえい。」
「ただいま、カエ。そうだ。釜戸山でね、出で湯団子を貰ったよ。皆でおあがり。」
「あいあおう。」
団子が入っている包みを受け取り、ニッコリ笑った。
村に入ってすぐ、早稲の闇に気づいた。逃げ出そうとして見つかり、殺される。
初めにカエ、次に父母、兄姉。目の前で撫で斬られ、血の飛沫を浴びて叫ぶ。
首筋を斬られ、ドタッと倒れた。背と首、二度斬られたのに、息があった。ピクピクしていた。
止めを刺そうとしたジンに、セツが立ちはだかる。遅れて駆け付けたフウにも止められ、やっと諦めた。
危うかったが、助かった。命は繋いだものの、声が出なくなっていた。
唯一人生き残った、四つの幼子。セツはシゲに、カエを託した。共に暮らせば、ジンに会わせることになるから。
あれから四つ、秋を迎えた。すらすら話せるまで、まだまだ時がかかるだろう。ゆっくりで良い。少しづつでも、話せるようになったのだから。
他にも話せない子がいる。皆、目の前で親を殺されている。血の飛沫を浴び、言の葉が出なくなった。
親や兄姉に手を引かれ、逃げる。足が縺れて転び、手を離してしまう。直ぐ抱き起こされ、走り出そうと背を向けた時、斬り殺された。
生き残った子は、己を責める。あの時、転ばなければ。あの時、手を離さなければと。
捕まえて質に取れば、逆らわなくなる。だから早稲のは、子を狙う。死なないくらいに傷つけ、助けたければ従えと。
良村の人は皆、心にも体にも、深い傷を負っている。歪んでしまっている。大人は、手遅れだ。子らは、間に合う。間に合わせる。
生きられなかった人の分まで、幸せになってほしい。真っすぐ育って、強く優しい大人に。
「で、どうだった? 話し合い。」
子らが仲良く、団子を分け合っている。ニコニコしながら見ていたシゲに、ノリが尋ねた。
「助け合うことになった。とはいえ、ウチが出すのは、食べ物だけだ。少し、な。」
良山には、子が多い。それも育ち盛り。モリモリ食べて、大きく育つ。多く備えているとはいえ、初めての植え付け。豊かに実るかどうか・・・・・・。だから、少しで良いと言われた。
シゲは長として、求めた。戦を仕掛けた者に、裁きをと。捕らえて獄に入れてしまえば、決して逃げられない。しかし、人手が足りない。
話し合いの末、植え付けが済むまで、待つことに。
渡す食べ物は少しで良いし、人手は出さずに済んだ。とはいえ、良村で初めての植え付け。気に掛かることが無いと言えば、嘘になる。
「そうか。ココ、冷えるからな。育つかどうか。いや、育てる!」
コタが胸を張る。
「なんとか、なるさ。この山、豊かだから。」
カズも、ニッコニコ。